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しおりを挟む「なんで婚約者の贈り物が一番遅くに届くのかしらねリエト卿。しかもあなた、うちの可愛い可愛い可愛い可愛いルクレツィアにこんなものを正気なの!?」
「お母様落ちついて。リエト卿に罪はないと思うわ。それと口調がお父様と同じ感じになってますから気をつけて」
「嫌な予感がしてお父様を呼ばなかったお母様を褒めてもらいたいわ。よりにもよってこんな破廉恥なものを……あのワカメ頭が……!!」
リエトの顔はこれまでになく青ざめ、もはや人生諦めた感も漂っている。それもそのはず、原因はリエトが持ってきたシルヴィオからの贈り物にあった。
時は少し前に遡る。
アンジェロから貰った絵本を読みながら、マグダの淹れてくれたお気に入りの紅茶を飲んでいたルクレツィア。大好物である苺のジャムが中央でキラキラと輝く可愛いジャムクッキーを口に運んでいた時、それはやってきた。
「お、お嬢様!」
このやりとりも本日三回目だ。となると思い当たるのは一つしかない。
「シルヴィオ様からの使者がきたのね?」
「は、はい!いらしたのはリエト卿です」
──可哀想に……
もはや彼に対しては同情しか湧かない。
シルヴィオに選ばれてしまった彼の人生は、茨どころか針山の上を素足で歩いてぶすぶすと穴が開いただけでなく、そこにすーすーと風が吹いていくような人生だっただろう。
なのに彼はルクレツィアに対し、だいぶ遅かったが誠意を示してくれた。そんな彼のことを無下に扱うことなんてとてもできない。
今後のことや、アラベッラのことについても色々聞かなくてはと、ルクレツィアはリエトを応接室に通すよう執事に命じた。
せめてシルヴィオの目の届かない今だけは、楽に過ごさせてあげよう。シルヴィオに苦しめられた同士、美味しいお茶を飲みながら愚痴を言い合おうではないかと思ったのだ。
しかし、彼が運んできた物を見た瞬間、そんな気持ちはすべて吹き飛んでしまった。
「なんですか……これは……」
リエトが無言で差し出したのは少し大きめの箱。ルクレツィアが入室してから目を合わせようとしないその様子から、嫌な予感しかしなかったが、まさかこんなものが入っていようとは夢にも思わなかった。
幅の広い紫のレースのリボンを解き、箱を開けた瞬間ルクレツィアは固まった。凍りついたという方が正しいかもしれない。
中に入っていたのは下着。しかも普段使いのものではない。
白い絹糸で編まれたレース生地に、頼りない紐がついているところまではまだ許せる。
しかし胸の頂にあたる部分と、クロッチの部分がパックリと開いていて、それぞれに妙な金の鎖がついていた。
理解の範疇を超えた一品に、ルクレツィアは言葉を失った。
向かい合わせに座るリエトも目を閉じて天を仰いでいる。
そんな時だった。母がやってきたのは。
「昨日ぶりですわねリエト卿。色々とお伺いしたいことがあってお邪魔させていだきますわ……って、なにかしらこれは……!!」
そして冒頭へと戻る。
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