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しおりを挟む「フェ、フェリクス?」
いきなり姿を現したフェリクスに驚いたローゼリアは、指輪の入った小箱を慌てて閉めようとして手を挟んだ。
「痛っ!!」
「それを返すんだ!!」
ローゼリアが痛みで片手を離した瞬間フェリクスは取り上げようと長い腕を伸ばした。
しかしローゼリアは身体をたたむように折り曲げ箱を隠す。
「ダメ!!これは私の物なの!!」
「何を言ってるんだローゼリア!それは私がシルフィーラ嬢のために注文した物だ!君だって知ってるよな!?」
フェリクスは何とか小箱を取り戻そうとするがローゼリアは死んでも渡さないとばかりに胸に抱え込んでいる。
目の前で繰り広げられているのは痴情のもつれ?それとも窃盗犯の逮捕劇?一体どちらなのだろう。
突然始まった騒ぎにシルフィーラは呆気に取られるしかなかった。
(どうでもいいけど、本当にどうでもいい事だけど、どうして私のために注文した指輪の事を彼女が知ってて持ってるのよ!)
知ってるのはまだわかる。おそらくフェリクスが細部に渡り相談でもしたのだろう。
石は何にする?とか台は金?銀?それとも白金かな?とか言いながらキャッキャウフフと……それはそれは楽しかった事だろう。
しかしさっきのフェリクスの様子だとあれは正真正銘私のためのもので、彼はそれを今必死で取り戻そうとしているように見える(相変わらず私の存在空気だけど)。
「エリオ、お前指輪の納期が遅れていると行ったな!それがなぜここにあるんだ!?」
フェリクスの剣幕にエリオは青い顔で地面にへたり込んだ。
「エリオ!!」
しかしエリオは声にならない声を上げ、地面に額を擦り付けるようにして泣き出してしまった。
「説明しろローゼリア!!なぜこれが今君の手元にあるんだ!?それとさっきの言葉は何なんだ!?俺は君にそんな事一言も言った事はないぞ!!」
「やめてフェリクス!私は何もしてない!」
怒りに震えたフェリクスが拳を強く握り締めたその時だ
「いやー、なかなか楽しいね。王宮でもここまで恥ずかしい騒ぎはなかなかお目にかかれないよ。やっぱり遠路はるばる来た甲斐あるねぇ。」
茂みの先からルシールと二人の兄がぞろぞろと出て来たのだ。
(……もっと早く出て来なさいよね……!)
しかし下から睨め上げるように見て来るシルフィーラを華麗に無視し、王子様はローゼリアの側に歩み寄る。
「あの……どなた……ですの……?」
ルシールはぽけーっと自身の良すぎる顔面に見とれるローゼリアの前に跪きこう言った。
「僕は第二王子ルシールと申します。美しいお姫様、どうかその手に口付ける事をお許し下さいませんか?」
「まあ!!」
ローゼリアはさっきの騒ぎなどどこへやら。可哀想な自分を王子様が助けに来てくれたとでも思っているのだろうか。うっとりとした表情でルシールの前に右手を差し出した。
「ふふ。僕ね、お馬鹿さんはそんなに嫌いじゃないんだよ。」
「えっ?」
一瞬の事だった。
ローゼリアが気付く暇もないほどに素早い動きでルシールは小箱を取り上げた。
「ほら」
そしてそれをなぜかシルフィーラに向かって放り投げたのだった。
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