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外伝 ヤリ捨て姫の勘違いは絶好調編
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しおりを挟むバラデュール公爵家の諜報員が王都へ向かってから三日後のこと。彼らは他国の王族を調べるという難しい依頼にも関わらず、驚くほどの速さで帰ってきた。さすが公爵家お抱えの精鋭だとエリーシャは感心した。
「カサンドラ・アマラ・ベルーガ。ベルーガ国王の第一子で二十三歳……確かあの国は、王位継承に関して男子でなければ駄目という決まりごとはなかったわね……それなのにこの年になるまで婚約者も持たずに竜騎士団に所属してるなんて……」
カサンドラはエリーシャより七歳も年上で、加えてあの美しさだ。男女のことはもちろん、世間に関してもまったく無知なエリーシャ。そんな自分より、同じ場所に立ち、同じものを目に映すカサンドラといる方が楽しいと感じるのは仕方のないことだ。だってこれまでもエリーシャは、フィランを楽しませるための努力をなにもしてこなかった。フィランが心を変えたのも、仕方がないことだったのかもしれない。
しかし夫人が読み上げた内容は、エリーシャの考えていることとは違っていた。
「……うちとしては非常に残念ですけれど、ルクレールの息子はシロですわね」
「え……シロ、とは?」
「フィラン殿とカサンドラ姫との間には、浮気を疑うようなことはなにもなかったということです。フィラン殿を庇うようで癪ですが……今回の件については“カサンドラ姫がエリーシャ姫様を故意に傷つけようと画策したものである”と報告書には記されています」
その他にもフィランがエリーシャに宛てた手紙をカサンドラが故意に破棄したこと。浅緋の竜の容態が急変し、フィランがその側を離れられなかったこと。カサンドラが長い間フィランに懸想していたことなどが詳細に綴られていた。そしてなぜかベルーガの人間は剛毛傾向にあるというよくわからない一文も。
エリーシャは急に身体の力が抜けてしまった。二人の間にはなにもなかった?だって、それなら自分が見たものは一体なんだったのだ。二人は間違いなく仲睦まじい恋人同士にしか見えなかった。
「フィラン殿はカサンドラ姫を邪険に扱うわけにはいかなかったのでしょう。これによると、公にはされていないようですが、浅緋色の竜は二人が同時に発見したとあります。それだと竜の所有権は両国それぞれにあり、最終的な決定は国家間で行われることになる。ですがフィラン殿は浅緋の竜をどうしてもエリーシャ姫様の騎竜にしたいと言い、カサンドラ姫に引いてもらうよう相当ごねたとあります。おそらくカサンドラ姫に頼み込んで、最初に発見したのはフィラン殿であると口裏を合わせてもらったのでしょう」
「あの子を私の騎竜に?どうしてそんな……あっ……」
エリーシャにはそのことについて思い当たる節があった。
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