【本編完結】病弱な三の姫は高潔な竜騎士をヤリ捨てる

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外伝 ヤリ捨て姫の勘違いは絶好調編

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 その時、会場にシャローナが入場して来た。
 次期女王として指名されているシャローナの入場に、騎士団員達は皆立ち上がって出迎えた。
 (……リシャ?)
 王族席を見ると、いつの間にかエリーシャの姿が消えている。
 フィランは辺りを見回すが、愛しい人の姿はどこにも見えない。

 「お久しぶりね、カサンドラ姫。そしてフィランも。この度の遠征、本当にお疲れ様でした。」
 
 シャローナはフィラン達の側まで挨拶に来た。どちらかと言えばあまり前に出ない印象のシャローナが、わざわざ自分達の席に出向いた事に、フィランは少しだけ違和感を感じる。

 「カサンドラ姫も、こんな時くらいは王族席に座って下さればいいのに。」

 しかしシャローナの誘いにカサンドラは首を振る。

 「お気持ちは有り難いのですが、今回は王族としてではなく、竜騎士団員として来ておりますから。」

 カサンドラは王族としての公式の訪問以外は決して王族席に座らない。そして何だかんだと理由をつけてはフィランの隣を陣取る事をシャローナはよく知っていた。

 「ふふ、そうでしたわね。けれどフィラン。あなたもエリーシャの夫となる身なのだから、そろそろこの席次も考えないとね。」

 シャローナの言葉にカサンドラの表情が曇る。

 「はい。それとシャローナ殿下、リシャはどうしたのでしょうか。姿が見えないのですが……。」

 “リシャ”
 その言葉にカサンドラの顔は、僅かだが、いびつな形に変わる。

 「そうね。帰ってきて顔の一つも見せない男に呆れたんじゃない?今日のエリーシャはとても綺麗だったわよ。ねえ、カサンドラ姫?」

 しかしカサンドラの返事を聞く間も与えず、フィランは納得が行かないとばかりに口を挟んだ。

 「シャローナ殿下、今のはどういう意味です?私はちゃんとリシャに、すぐに会いに行けない事を手紙で伝えました。」

 「あら……でもエリーシャはそんな事言ってなかったわよ?」

 「そんなはずは……!」

 「宴席が始まる前に私のところに来たのよ。あなたの凱旋祝いだから、とびきり綺麗にして迎えてあげたいって。でもあなたには会えてないって淋しそうにしてたわ。手紙の事なんて言ってなかったわよ。」

 シャローナの目はフィランではなく、なぜかカサンドラの方を向いていた。


 

 

 

 

 

 
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