74 / 121
外伝 ヤリ捨て姫の勘違いは絶好調編
14
しおりを挟むその時、会場にシャローナが入場して来た。
次期女王として指名されているシャローナの入場に、騎士団員達は皆立ち上がって出迎えた。
(……リシャ?)
王族席を見ると、いつの間にかエリーシャの姿が消えている。
フィランは辺りを見回すが、愛しい人の姿はどこにも見えない。
「お久しぶりね、カサンドラ姫。そしてフィランも。この度の遠征、本当にお疲れ様でした。」
シャローナはフィラン達の側まで挨拶に来た。どちらかと言えばあまり前に出ない印象のシャローナが、わざわざ自分達の席に出向いた事に、フィランは少しだけ違和感を感じる。
「カサンドラ姫も、こんな時くらいは王族席に座って下さればいいのに。」
しかしシャローナの誘いにカサンドラは首を振る。
「お気持ちは有り難いのですが、今回は王族としてではなく、竜騎士団員として来ておりますから。」
カサンドラは王族としての公式の訪問以外は決して王族席に座らない。そして何だかんだと理由をつけてはフィランの隣を陣取る事をシャローナはよく知っていた。
「ふふ、そうでしたわね。けれどフィラン。あなたもエリーシャの夫となる身なのだから、そろそろこの席次も考えないとね。」
シャローナの言葉にカサンドラの表情が曇る。
「はい。それとシャローナ殿下、リシャはどうしたのでしょうか。姿が見えないのですが……。」
“リシャ”
その言葉にカサンドラの顔は、僅かだが、いびつな形に変わる。
「そうね。帰ってきて顔の一つも見せない男に呆れたんじゃない?今日のエリーシャはとても綺麗だったわよ。ねえ、カサンドラ姫?」
しかしカサンドラの返事を聞く間も与えず、フィランは納得が行かないとばかりに口を挟んだ。
「シャローナ殿下、今のはどういう意味です?私はちゃんとリシャに、すぐに会いに行けない事を手紙で伝えました。」
「あら……でもエリーシャはそんな事言ってなかったわよ?」
「そんなはずは……!」
「宴席が始まる前に私のところに来たのよ。あなたの凱旋祝いだから、とびきり綺麗にして迎えてあげたいって。でもあなたには会えてないって淋しそうにしてたわ。手紙の事なんて言ってなかったわよ。」
シャローナの目はフィランではなく、なぜかカサンドラの方を向いていた。
11
お気に入りに追加
2,224
あなたにおすすめの小説
あなたが残した世界で
天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。
八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

褒美だって下賜先は選びたい
宇和マチカ
恋愛
お読み頂き有り難う御座います。
ご褒美で下賜される立場のお姫様が騎士の申し出をお断りする話です。
時代背景と設定をしっかり考えてませんので、部屋を明るくして心を広くお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿しております。

皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。

妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

出生の秘密は墓場まで
しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。
だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。
ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。
3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる