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外伝 ヤリ捨て姫の勘違いは絶好調編
3
しおりを挟む「ノヴァ!」
「ピイィィ!!」
ひしっと抱き付き激しくスリスリするところはいつまで経っても変わらない。少し身体は大きくなったがエリーシャにとってノヴァはいつでも可愛い赤ちゃんのままだ。
「うふふ、淋しかった?私も淋しかったわノヴァ。今日はいっぱい遊びましょうね。」
「ピィ!」
竜舎の周りを散歩するがやはり遠征中は人が少ない。いつも挨拶をしてくれる団員達が見当たらず、エリーシャは少しだけ淋しい気持ちになった。
「早く帰ってきてくれればいいのに……。」
「……ピ……ピィ……。」
しかしノヴァは何だか色々と複雑そうだ。
「姫様、お久し振りです!」
不意に声を掛けられ振り向くと、そこには以前お世話になった騎士団長のラウルがいた。
「まぁ、ラウル様。お久し振りです。」
「ええ、姫様はお散歩ですか?」
あの一件以来騎士団の方とも顔見知りになれた。壊滅的被害を受けた竜騎士団を必死で救ってくれた騎士団の皆様にはとても感謝している。
そしてこのラウルという男はフィランと年も近く、エリーシャの顔を見れば何かと声をかけてくれる気の良い人物だ。
「今回の遠征はいつもと違いますから姫様も心配でしょう?」
「え……?」
いつもと違うとはどういう意味だろう。竜の生態調査としか聞いていないのだが……。
「気の荒い竜が襲って来る事もあるんですよ。彼らは人間より遥かに力がありますからね。万が一の時はそれこそ死闘です。」
「そうなのですね……。知りませんでした。」
「でも大丈夫ですよ。なにしろ今回はベルーガとの合同遠征ですからね。フィランも気合いが入ってるでしょう。」
「ベルーガと?」
「おや?そこまでは聞いてなかったですか?」
ベルーガとはこの国の西方に位置する友好国だ。彼らも竜を愛し共存していて竜騎士団同士の交流もある。
だから合同遠征と聞いても不思議ではない。
(……でも何でフィーは言ってくれなかったのかしら……)
エリーシャは疑問に思った。
「まあきっと忘れてたんでしょう。あいつ今は姫様の事しか頭にありませんからね。」
「うふふ、そうだといいんですけど。」
「そうそう、姫様と言えばベルーガの姫も今回の遠征に参加してるんですよ。」
「ベルーガの姫?」
「ええ。ベルーガの姫カサンドラ様は竜騎士団員としてご活躍されてるんです。」
「ええ、聞いた事があります!女性の身で竜を乗りこなし戦いにも出られるとか……お会いした事はありませんがそのお話を聞いた時はとても憧れました。」
「今回の一番の目的は生態調査ですが、野生でも人を怖がらない良い竜がいれば手に入れるチャンスでもあるんです。姫様も、珍しい竜が見れるかもしれませんよ。」
「わぁ!それは楽しみだわ。ね、ノヴァ。」
「ピィィ♪」
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