【本編完結】病弱な三の姫は高潔な竜騎士をヤリ捨てる

クマ三郎@書籍発売中

文字の大きさ
上 下
59 / 121

59

しおりを挟む





 「一晩…かけて…?」

 「ええ。だから私も一晩かけてリシャを愛します。」

 ?今って言った?

 「フィー?まだ明るいのよ?」

 今から一晩中臨むとなるとどれくらいの時間になるのかわかって言っているのだろうか。

 「本当はあの日から毎晩離さないつもりだったんです。……だからその分も今日はたっぷりと愛させて下さい。」

 そう言うとフィランはエリーシャと身体を繋げたままベッドに横になり、優しく抽挿を始めた。

 エリーシャの身体は弱い。一晩中なんて無理させられないのはわかってる。
 でもあの日……初めて身体を繋げたあの夜、フィランは不思議で仕方なかった。
 自分の身体の弱さを誰よりも知っていて、いつも他人に迷惑をかけないようにと気にしながら暮らしているエリーシャ。
 しかしそんな彼女があの時だけはまるで無理を承知でと言うように、フィランが途中でやめてしまわないようにと必死に手を伸ばして求めてきた。
 けれど今ならわかる。それもこれもすべては最初で最後だと決めていたからだったのだ。
 そんな気持ちで抱かれるのはどんなに辛かった事だろう。対して自分はこの時間が永遠に続くものだと信じ彼女を抱いていた。本当に幸せだった。
 (まあ……その分地獄に落とされたような思いをした訳だが……)
 だから一晩かけてもいい。優しく愛したい。
 終わらない幸せがある事を自らの行動で証明してあげたい。
 
 「……私のせいで辛い思いをさせた事……どうか許して下さい……」

 するとエリーシャは自分を後ろから抱き締めるフィランの手を胸に抱いて言う。

 「……私、ずっと幸せだったわ。フィーを初めて見つけたあの日から今までずっと……幸せじゃない時なんて一瞬もなかったわ……だからそんな事言わないで。」

 欲しかったのはあなただけ。
 叶ったのだからそれ以上何を望む事があるだろう。
 それがたった一度の事だったとしても、その一度のために生きてきたのだから。

 「リシャ……!!」

 顔は見えないけどきっとフィランは泣いている。
 エリーシャは優しい律動に身を任せ、二度目の奇跡を身体中で感じていた。

 


 

 
しおりを挟む
感想 215

あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

あなたが残した世界で

天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。 八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。

褒美だって下賜先は選びたい

宇和マチカ
恋愛
お読み頂き有り難う御座います。 ご褒美で下賜される立場のお姫様が騎士の申し出をお断りする話です。 時代背景と設定をしっかり考えてませんので、部屋を明るくして心を広くお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿しております。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

出生の秘密は墓場まで

しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。 だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。 ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。 3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

処理中です...