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しおりを挟む「一晩…かけて…?」
「ええ。だから私も一晩かけてリシャを愛します。」
私も?今私もって言った?
「フィー?まだ明るいのよ?」
今から一晩中臨むとなるとどれくらいの時間になるのかわかって言っているのだろうか。
「本当はあの日から毎晩離さないつもりだったんです。……だからその分も今日はたっぷりと愛させて下さい。」
そう言うとフィランはエリーシャと身体を繋げたままベッドに横になり、優しく抽挿を始めた。
エリーシャの身体は弱い。一晩中なんて無理させられないのはわかってる。
でもあの日……初めて身体を繋げたあの夜、フィランは不思議で仕方なかった。
自分の身体の弱さを誰よりも知っていて、いつも他人に迷惑をかけないようにと気にしながら暮らしているエリーシャ。
しかしそんな彼女があの時だけはまるで無理を承知でと言うように、フィランが途中でやめてしまわないようにと必死に手を伸ばして求めてきた。
けれど今ならわかる。それもこれもすべては最初で最後だと決めていたからだったのだ。
そんな気持ちで抱かれるのはどんなに辛かった事だろう。対して自分はこの時間が永遠に続くものだと信じ彼女を抱いていた。本当に幸せだった。
(まあ……その分地獄に落とされたような思いをした訳だが……)
だから一晩かけてもいい。優しく愛したい。
終わらない幸せがある事を自らの行動で証明してあげたい。
「……私のせいで辛い思いをさせた事……どうか許して下さい……」
するとエリーシャは自分を後ろから抱き締めるフィランの手を胸に抱いて言う。
「……私、ずっと幸せだったわ。フィーを初めて見つけたあの日から今までずっと……幸せじゃない時なんて一瞬もなかったわ……だからそんな事言わないで。」
欲しかったのはあなただけ。
叶ったのだからそれ以上何を望む事があるだろう。
それがたった一度の事だったとしても、その一度のために生きてきたのだから。
「リシャ……!!」
顔は見えないけどきっとフィランは泣いている。
エリーシャは優しい律動に身を任せ、二度目の奇跡を身体中で感じていた。
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