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しおりを挟む「団長……このままでいいんですか!?」
皆でひとしきり男泣きしたあと、団員の一人が立ち上がった。
「僕は……僕は悔しいです!僕らの団長がそんな目に遭わされて黙ってなどいられません!」
“そうだそうだ!!その通りだ!!”
泣いていた男達は涙を引っ込め口々に叫び出した。
「団長だって姫様に文句の一つも言いたいでしょう?だってこれは他に類を見ない悪質な手口ですよ!?」
団員のその言葉にフィランは顔を上げる。
「悪質……どこが悪質なんだ……?」
ヤリ捨てに種類なんかある訳がないと思っていたフィランは虚を衝かれたような顔をしている。
「だって団長が姫様を問い詰めて真実を知りたいと思っても、絶対に手が出せない場所に逃げ込んだんですよ!?あらかじめ計算していたとしか思えませんよ!きっとほとぼりが冷めた頃合いを見計らって姫様はこっそり出て来る。それで何事も無かったかのようにまた誰かと関係を……」「お、おい!その辺でやめとけ!!」
興奮して喋り続ける男を同僚が止めに入った。何故ならフィランの身体から異様なオーラが立ち上り始めていたからだ。
「……“また誰かと関係を”……?今お前……そう言ったのか……?」
「「「ヒィィッ!!」」」
「姫は……私だけでは満足出来ないと……?他の男とも同衾するつもりだと……?」
フィランは禍々しい闘気を纏い仁王立ちする。
「許さない……そんな事は絶対に許さない……!!」
マズい。これは非常にマズい。
このままではオムニブス修道院は団長の手によって焼き討ちに遭う。
そして団長は自らの手で姫様を殺したあと自分も後を追うに違いない。
「だ、団長、落ち着いて下さい!こいつはまだ童貞なんです!だから姫様のお考えなんてわかるはずもない!」
また別の団員が声を上げるがフィランの燃える闘気は勢いを増すばかりだ。
「まずはちゃんと姫様の考えを聞きましょう!どうして団長をヤリ捨てしたのかその訳を!ね!?」
「……どうやって聞くと言うのだ……オムニブス修道院は外部からの接触を一切禁じている。……やはりやるしかないか……!」
「だぁーっっから団長!!修道院を攻撃するのはナシですって!!おい、誰かいい考えがある奴はいないのか!?」
しかし悲しいかな竜騎士団は脳筋集団。そして余計な情報だが童貞の多いこの集まりでは、男女間の痴情のもつれにいい考えなど浮かぶはずも無く……。
誰もが頭を抱え始めたその時
「いい考えならある!」
突如聞こえた声に団員達が振り向くと
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そこには子竜を腕に抱く宰相が立っていたのだった……
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