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しおりを挟むエリーシャの部屋からの帰り道、レオノールは意外な人物に出食わし驚いた。
「あら、宰相様自ら何のご用?」
“宰相様”と呼ばれた年配の男性はこんなところでレオノールに会うなどとは思ってもいなかったのだろう。
こちらも驚いた顔で聞いてきた。
「これはこれはレオノール様!今日はエリーシャ姫のお見舞いですかな?」
「ええ、ちょっとね。あなたこそ一体どうしたの?」
「いえいえ……少しばかり爺のお節介をと……」
「お節介?」
「……実はまだ陛下からはいいお返事を貰えていないのですが、エリーシャ姫に縁談をと思いまして。」
「まあ!」
宰相は内心“しまった”と思った。
この家族はとにかく末の姫を可愛がっている。
自分の一存でこんな話を進めていると知れたら必ず邪魔されるに決まっている。
しかし宰相の読みは外れた。
すぐさま止めるよう言われるかと思ったが、レオノールの口から出たのは思いもよらない言葉だったのだ。
「ねえ……その話、詳しく聞かせてくれるかしら?」
***
ここのところ晴天が続いていたのに今日は朝から土砂降りの雨だ。
「姫様、フィラン様には使いを出しましたから安心してお休みになって下さいね。」
「……ありがとう、ニナ……。」
久し振りの高熱だ。しばらくは竜舎にも行けないだろう。
(……あの子はちゃんとミルクを飲んでくれるかしら……)
しかしエリーシャの心配は思わぬ形となって返って来る。
それは翌日の夕方の事だった。
未だ高熱の続くエリーシャに一通の手紙が届いたのだ。
流麗な文字で書かれたそれにはこう記されてあった。
エリーシャ姫
お身体の具合はいかがですか?
姫がいないとやはりあれは食事をしません。
ご迷惑を承知で今夜お伺いいたします。
フィラン
「……今夜?……お邪魔する?どういう事かしらニナ……?」
ニナは眉間に皺を寄せて首を傾げている。
「言葉の通りでしたら……いらっしゃるおつもりですよね……。」
「でも私こんなよ?本気かしら。」
しかしフィランが本気だった事をエリーシャはこの数時間後に知る事となる。
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