【本編完結】病弱な三の姫は高潔な竜騎士をヤリ捨てる

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 「プヒィー♡」

 エリーシャがフィランの発言に呆気に取られている間に子竜はミルクを完飲していた。

 「すごい!あんなに入ってたのにもう全部飲んじゃったの!?」

 「ピィ!」

 さっきの元気の無い様子が嘘のようにご機嫌さんだ。可愛らしくケプッと小さなげっぷまでしている。
 フィランは子竜から巨大な哺乳瓶を回収して立ち上がった。

 「戻りましょうか。」

 「は、はい!」

 ほんの少しの時間だったけど、間違いなく自分の人生で一番幸せな時間だった。
 今日の日の事はきっと一生忘れないだろう。 
 エリーシャは子竜を腕に抱き、竜舎への帰り道を歩きながら幸せを噛み締めた。
 
 「ありがとう……あなたのおかげよ……!」

 誰にも聞こえないようにそっと子竜に囁くと、エリーシャの言っている事がわかるのか“ピィ!”と返事をするように鳴いた。


 「「おかえりなさい!」」

 竜舎に戻ると笑顔のニナとさっきと変わらず顔面蒼白なルカが出迎えてくれた。
 フィラン様は哺乳瓶をルカに渡しながら口を開いた。

 「ルカ、ニナにミルクの時間を教えておいてくれ。ニナ、君はそれを覚えて姫に伝えてくれ。」

 「はい!あの……団長は?」

 「私は姫を部屋までお送りする。」

 「えっ!?」

 今……今何て?
 私を部屋まで送る?嘘でしょ?

 「行きましょう。」

 しかしどうやら嘘ではないらしい。
 フィラン様はもう竜舎の外へ向かって歩き出している。

 「あっ、あの!この子はどうすれば?」

 お腹がいっぱいで安心したのか赤ちゃん竜は私の腕の中でウトウトしている。

 「そのまま連れて来て構いません。」

 いいの!?
 でも私は少し迷った。いくら可愛くてもこの子を抱えて階段を上ったら確実に倒れる。
 その時だった。
 
 ピーーーーーーーーッ

 フィランが指笛を吹いた。
 すると辺りに突然風が吹き始める。
 (な、何?)
 風はどんどんと強くなり、目を閉じようとした瞬間ピタッと収まった。
 
 「わぁ……!!」

 目の前には翼を広げながらゆっくりと降りてくる銀の竜。 
 エリーシャがいつも窓から見ていたこの国一番の美しい竜だ。

 「私の騎竜ノエルです。そして彼はその子の父親でもある。」

 ノエルの瞳は子竜とエリーシャに向けられている。
 (……何て綺麗な瞳なの……)
 真っ直ぐに自分を捉えている瞳は透けるような金色だ。
 
 「あっ、そうだ私ったら!きちんとご挨拶しないと……」

 エリーシャは呑気にも眠ってしまった子竜をしっかりと抱きながらノエルに向かって礼をした。

「初めましてノエル。私はエリーシャよ。フィラン様に許してもらってあなたの大切な赤ちゃんにミルクをあげていたの。」

 竜はとても頭が良く、そして誇り高い生き物だと聞く。
 だからエリーシャはノエルを竜としてではなく、同じ目線で考えなければと思った。
 しばらくエリーシャを見ていたノエルだったが、突然その顔をエリーシャに向かって動かした。

 「えっ!?」

 そして驚くエリーシャの身体にスリッと頬擦りをしたのだ。
 


 
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