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しおりを挟む第三王女エリーシャは生まれた時から身体が弱かった。
ほんの少し部屋から出ただけで風邪をひき、毎日のように熱を出す日々。
十六歳になった今ではだいぶ身体は強くなったがそれもあくまで昔に比べればで、エリーシャは今日もベッドの上で過ごしていた。
けれどエリーシャは幸せだった。空を見れば優雅に舞うように飛ぶ美しい竜たち。
その中で一際美しい光り輝く銀の竜。希少な種類のその竜の背に乗り空を翔けるのは、エリーシャが幼い頃から憧れる人。
竜騎士団長のフィランだ。
銀の竜と同じ長い銀色の髪を後ろで一つに束ね、厳しい表情すら甘く美しく見えてしまう彼に心を寄せる者は多い。
その姿を近くで見たくて無理を押して出席した式典などでもやはりというべきか、彼は男女問わずたくさんの人に囲まれていた。
目を合わせた事も話した事もなかったがエリーシャはそれで満足だった。
お喋りなんてとんでもない。遠くからその姿を見れるだけでいい。
今日も大きな窓の側に置かれた大きなベッドに横になりながら、空を翔ける彼の姿を見つめていた。
「エリーシャ様、お身体の調子はいかがですかな?」
ここのところ顔を出すようになった宰相様はいつも私に体調の事を聞いてくる。
「姫様ももうお年頃……王室にはたくさんの縁談が届いております。」
いつ死ぬかわからないような病弱な王女。
それならば万が一の事が起こる前に国のために役に立てと言うのだろう。
覚悟は出来ている。
けれど一度だけ……たった一度でいい。
(フィラン様に抱かれたい……。)
叶うのならどんな事でも耐えてみせる。
神様……エリーシャはこの身に起こるどんな事も受け入れます。何も望んだり、欲しがったりもしません。
だから、だからどうかお願いです。
……フィラン様の愛を一度だけこの身に受けさせて下さい……。
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