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6章
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しおりを挟む「本当に美しい髪だったよ………。俺を見て微笑むその笑顔が可愛らしくてたまらなかった。だから君を誰の目にも触れさせたくなかったんだ。誰にも君を渡したくなかった。だからあんな事を………俺が愚かだった…。」
ジョエル様は零れる涙を拭いもせず私をその瞳に映し続ける。まるでこの一瞬一瞬を自分の中に刻み込んでいるかのようだ。
「この十年、一度だって君を想わない日はなかったよ。」
そんな訳ない。それならどうして会いに…謝りに来なかったの。
「君がもうすぐ十六になるという日に会いに行ったんだ。君のいる療養院へ…。」
「私に……?会いに?」
驚きで目を大きく開いた私にジョエル様は優しく微笑む。
「あの頃もとても美しかったけど…大人になった君は本当に綺麗だった。びっくりしたよ。小さな子供達と遊びながら笑ってたね。」
「………何故会わなかったの?」
ジョエル様はその問いに少しの間沈黙した。
そして躊躇いがちに口を開く。
「………アランがいた。向こうも俺の顔を知ってる。だから出るに出れなかった………。」
アランと私の関係は誰も知らない事。
じゃあこの話も本当の事だ………。この人は今、真実の姿で向き合ってくれているんだ。
「………何故夜会であんな事を言ったの……?」
ジョエル様は困ったような顔をする。
「……ほんとだね。何で君の前では素直に喋る事が出来ないのか自分でもわからない。あんな事思ってないよ………ごめん。」
私が側にいれば本当の事を教えてくれるの?
そして私が誰かといると駄目になる………。
何て自分勝手な人なの。こんな人のために私は今まで苦しんで苦しんで………。
「………許せない。」
ぽつり、と私の口から出た言葉に傷付いた顔をする。何でよ。傷付けたあなたがなんでそんな顔するのよ。
「もう………離して下さい………。」
解放を望む私に返ってきたのは。
「俺なら君を逃がしてやれる。」
予想もしない言葉だった。
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