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6章

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確かに言ったけど。
【お腹いっぱいになるまで食べていい】って言ったけど。

人間と言う生き物は理性ってやつがあるわけで。理性ってのは本人が思うより先に働くものですよね?

間違いない。この人はおそらく理性もどこかに丸ごと落としてきたに違いない。王宮内に落ちてるなら誰か全速力で拾ってきてくれないだろうか。


「マリー?私との最中に考え事?………考えるほど余裕があるなんて私の頑張りが足りなさすぎだね。」

違います。余裕どころか命の危機を前にして妙に頭がクリアになっただけなんです。

ユーリは拗ねたようにかぷっと私の肩を甘噛みする。

「婚約したら毎晩離さないよ………考えるだけで幸せだ………。」

婚約後よりまずは明日…じゃないおそらくもう日付はとっくに変わってるはずだ。今日の事を考えてくれないだろうか。このままじゃ……このままじゃ私………

「………このままずっとマリーの中にいたい。眠る時も繋がっていようかな………」


もうダメだ………


「………ユーリ………」

「どうしたのマリー?もっと?」

違う…違うけどそんなに期待に満ちたキラキラした目で見つめられると言えない。

「どんな事でも叶えてあげたい…マリー、どうしてほしい?」

「うぅ……ううぅぅ……うえぇぇぇん!!」

「マリー!?」

ベッドに突っ伏して泣きじゃくる私にユーリが慌てる。

「マリー!痛かった!?え?違う?じゃあどうしたの!?」

寝たい!寝たいの!!

「わぁぁぁぁぁん!」

もう自分でも止められない。
だって応えてあげたいけど寝なきゃ明日を乗り越えられないもの!王女様が来るのに!
ユーリが恥ずかしい思いをしないようにと頑張って準備してきたのに!

「ユーリのばかぁぁぁぁぁ!!!!」

ぎゃんぎゃん泣く私にユーリは訳がわからず謝り続ける。とりあえず自分が何かしてしまったということだけは気付いて貰えたようだ。

「マリー、何が嫌だった!?体位が辛かった?それともキスがいつもより足りない?あ…………!!」

気付いた!?気付いてくれたの!?

「そうか………マリーごめん。回数が足りなかったんだね。最初にゆっくり時間をかけすぎたから。本当にごめんマリー。大丈夫、足りなかった分今からたっぷりと愛してあげるからね。」

まるで“任せておいて”と言わんばかりの妖艶な笑みに、いつもなら肌が粟立つところだが今日は違う。

ユーリが気付くのを待ってたら朝がくる。って言うかもう朝なんじゃないの!?これは覚悟を決めて毅然とした態度で言わなければ!

「ユーリ!!」

「ん?何マリー?………愛してるよ………。」

「んっ!!んぅ………!!」

柔らかな唇が重なって、私にそれ以上の言葉を許してくれない。しかも口付けたまま再び私の中に挿入ってきた。

びっくりして目を開けると……ん!?
目の前には何やらニヤニヤとした笑顔が………。

こ、この人………まさかわかっててやってる!?
この……この性悪王子~~~!!!

「んーーーーー!!!」

唇は塞がれているから必死に胸を叩いて抵抗してみるも逞しい身体はびくともしない。
そのうちに堪えきれなくなったのか、ユーリは唇を離して笑いだした。

「くくく………可愛いねマリー。」

「もうっ!!ユーリのばかぁ!!」

「わかってるよ。そろそろ寝ないと明日が辛いよね。これで最後にするから…全身で私を感じていて………。」

そう言ってユーリはまた口付ける。
最後は私を包むようにして優しく愛してくれた。とても優しくて温かくて気持ち良くて………
当然だが私は気を失った。





***********




翌日、目が覚めると身体はいつの間にか綺麗にされていて、隣の部屋に繋がる扉が開いていた。

今何時!?
慌てて時計を見ればまだ少し遅めだが朝食の時間くらいだった。
朝食………そう思うとお腹がきゅるると音を立てる。昨夜………情事の合間にユーリが用意してくれていた軽食は食べたが、何しろ膝の上で食べさせるものだから、恥ずかしくてろくに食べれなかった。

そろそろとベッドから降りて隣の部屋へ向かうと、そこにはお茶を飲みながら書類に目を通しているユーリがいた。

「マリー!おはよう。もう起きて大丈夫なの?」

大丈夫………と言えば大丈夫ですが、あなたは一体何時に起きたの?あんなにしたのに!

「私もさっき起きたところだよ。さぁおいで。」

隣に座ろうとした私をやっぱり膝の上に抱く。
ぎゅうっと抱き締めて私の胸に顔を埋めるユーリの頭を優しく抱くと、彼の腕の力が少し強くなる。

「あぁ………幸せだ。ずっと夢に見てたよ。朝起きて君におはようってキスして、こうやって抱き締める日を。」

「おはようユーリ…。」

まだキスをしていなかったから、両手でユーリの頬を包んで“ちゅっ”と小鳥のようなキスをした。

「今日は大変だと思うけど、無理はしないようにね。何かあったらすぐ私に言うんだよ。私もなるべく君から離れないようにするから。」

ユーリがいてくれるならきっと大丈夫だ。

「うん。大丈夫。だから今夜はもう少し寝かせてね。」

私の言葉にユーリは“善処する”と言う。
彼の善処がいかほどのものなのか。これから長い人生を共にするのだ。こうやって我が身を犠牲にしながら確かめて行くしかないと私は覚悟を決めたのだった。






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