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5章
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しおりを挟む「さっきから黙って聞いていれば………!!私は公爵家の人間よ!そんな発言が許されると思ってるの!?」
「許されるさ。君は知らなかったみたいだけど僕も公爵家の人間だ。爵位が昇格するって聞いた時はめんどくさいなと思ったけど、お陰で君みたいな女の子に我慢せずに済んだから結果良かったね。」
「公爵家!?」
「そう。この前の夜会では会わなかったね?何してたの?
僕の名前はクリストフ・レーブン。レーブン公爵家の長男だ。生まれた時は侯爵家だったけどね。で、君は?」
「は?」
「だから君の生まれを聞いてるんだって。頭の回転悪いなぁ。そんなんでよくマリエル様に文句つけられるよね。生粋の公爵家のご令嬢にあんな失礼な事を言うくらいなんだから、君って相当高貴な生まれなの!?もしかして隣国の王族とか!?いや、でも隣国の王族や高位貴族にこんな下品な子はいないはずだけどなぁ……。」
クリストフ様は顎に手を当ててうーん、と本気で考え込んでいるようだ。
「ねぇ、早く教えてよ。君、出身は?養女になる前の家名は?同じ公爵家同士仲良くなるためにも知っておくべきだと思うんだよ。」
クリストフ様の邪気の無い笑顔にマリアンヌ様はたじろいでいる。
「私はあなたと仲良くする気なんてないわ!」
「え~?そうなの?
でもそれはこっちも同じだよ。僕達意外なところで気が合うね!素性もよくわからない人にうちの大切な人員を割くわけにいかないし、護衛の件は諦めてくれる?」
「なっ!なんですって!?」
「護衛にだって選ぶ権利があるんだよ?だって自分が心底惚れた相手じゃなきゃ命懸けて守れないでしょ。ねぇ皆?」
クリストフ様の問い掛けに、後ろに控える皆さんの「はい!!」と言う野太い声が響く。
「わかったでしょ?僕らはマリエル様に仕えたいんだ。そして今はユリシス殿下に呼ばれ、マリエル様のために護衛の選定をしてる。君、ユリシス殿下から招待受けたの?」
殿下から呼ばれたのかと言われ、マリアンヌ様はすがるような目をユーリに向ける。助けを求めているのだろうか。しかしユーリは知らん顔だ。周りの視線が冷たくマリアンヌ様に刺さる。
「それくらいにしていただいてよろしいでしょうか?クリストフ様。」
いつの間にこの場へ来ていたのか、助け船を出したのはジョエル様だった。
ユーリが私を隠すように一歩前へ出る。
「妹は世間知らずでね。ついつい誰にでも気安く接してしまうんだ。私も注意はしてるんだが………不快な思いをさせてしまい申し訳なかったね。レーブン公爵も。」
「いえ。私どもより殿下に………。」
レーブン様がユーリに謝るよう促すと、ジョエル様はユーリに向かって跪いた。
「殿下。妹の非礼をお詫び致します。マリエル様も………大変申し訳ありませんでした。」
ジョエル様が謝る姿にマリアンヌ様も少しは悪いと思ったのだろう。ジョエル様の隣に駆け寄り礼を取る。
「ジョエル。今日はマリーの護衛の選定だ。妹は連れて行け。それとマリアンヌ嬢。」
「はい!なんでしょうユーリ?」
ユーリに話し掛けて貰えたのが嬉しいのだろう。先ほどのしおらしい表情は瞬時に何処かへ行ってしまったようだ。
しかし対するユーリの表情は険しい。
「私の名を、愛称を呼んでいいのはマリーだけだ。今後そのように私を呼ぶのであれば容赦しない。わかったな。」
「えっ!?」
マリアンヌ様は心底理解できないと言う顔でユーリを見る。
「マリー、皆もすまなかったね。さぁ、続けよう。
マリー………。」
名前を呼ばれ、何だろうとユーリを見上げると、ユーリは皆の前で私に口付けた。背中と腰に手を回し、身体が密着するように抱かれる。
ユ、ユーリ!!
何してるの!?皆さんが顔を真っ赤にして見てるじゃないの!!
兵士の皆さんからは女子のような“きゃー”と言う叫び声や“おぉ……”というざわめき。クリストフ様はヒュウッと口笛を鳴らしている。
「ユーリ!は、恥ずかしいですこんなところで!!」
唇を離した後ユーリに文句を言うと、ユーリはこちらを見ながらも私越しに何かを伺い見ている。不思議に思いそっと同じ方へ視線を向けると、そこには顔を歪め身体を怒りに震わせるマリアンヌ様と………
恐ろしいほどに冷たく殺気を孕んだような目でユーリを睨み付けるジョエル様がいた。
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