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4章
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しおりを挟むこれは一体どういう事だろう。彼には妹なんていない。マーヴェル家は男子が三人だったはず。
「マリアンヌ、マリエル様に御挨拶できたの?良かったね。」
「ええ!お兄様の言った通りのお姿だったから、すぐわかったわ。マリエル様、良かったら私ともお友達になってくださいませんか!?」
お、お友達!?
「こらマリアンヌ、お会いしてすぐにそれは失礼だぞ。」
マリアンヌ様ははぁい、と頬を膨らますようにして拗ねる。その仕草はとても可愛らしい。
「失礼しましたね。この子は最近我が家に迎えたのです。恥ずかしながら父はとても女性に優しい人でね…マリアンヌの母とはその昔情を交わす仲だった。最近になってマリアンヌの存在を知って、我が家で面倒を見る事になったのです。」
そう言えばシャルル様が仰っていた。ジョエル様と下の弟達は母親が違うと………。
「この通りまだ公爵令嬢として修行中なのです。良かったら仲良くしてやって下さい。マリエル様に目をかけてもらえるなら安心です。」
何なのだろう。手のひらを返すかのようなこの態度の違い。夜会では明らかに敵意丸出しだったのに。とても気持ち悪い。
「マリエル様、ぜひよろしくお願いします!」
大きな瞳をキラキラ輝かせながら大きな声で叫ぶマリアンヌ様を再びジョエル様が窘める。
傍目に見ればとても良い兄妹に見える。でも……何か、“何か”としか言えないがおかしい。
妙に胸騒ぎがする。どうかそれが勘違いであればいいと今はそう思うことしか出来なかった。
ユリシス殿下に他の婚約者候補が立ったと噂されたのはそれからしばらくしての事だった。
事の発端はマーヴェル家とそれに賛同する貴族達からの進言だった。
王国の平和と秩序を守るためにはユリシス殿下のお妃選びは公平であるべきと彼らは詰め寄った。
現国王陛下は他国より妃を娶られたため国内の乱れは少なかったが、マリエル嬢を娶る事によりフォンティーヌ公爵家だけに権力が集中すれば、いずれ国は乱れるだろうと。
それを防ぐためにもユリシス殿下には正妃と、正妃と同格の扱いの側妃を侯爵以上の家格から娶られるべきと言うのだ。
その筆頭候補に挙げられたのはマーヴェル家のマリアンヌ嬢。
あの日のマリアンヌ様の無邪気な笑顔は本物だったのか偽物だったのか。
今の私には知る術がなかった。
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