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4章

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ユリシス様は二人が話終わった後もしばらく黙ったままだった。窓の外を眺めたまま。


「………マリーちゃん。こっからはあんま見ない方がいいかもしれないよ?」

何でそんな事を言うのか、サーリー様の真意がわからない。
もしかしたらユリシス様はマチルド様を信じてしまったのが見てとれた、とか?親友だからこそわかる何かを感じたのだろうか。
しかしこれは私自身の問題でもあるのだ。たとえユリシス様がどう判断されようとも私は最後まで見届けたい。

「大丈夫です……。どんな結果になろうとも覚悟はできています。」

今歩いているのはユリシス様が作ってくれた道だ。彼がそれを終わらせるなら仕方のない事。
私は自分にそう言い聞かせた。



「………まだ幼い身でそこまで周到に用意して集団で虐げるなんて……本当にとんでもない性悪だね………。」

ユリシス様の言葉にズキリと心が痛む。
それは私の事を言っているのだろうか。

「ユリシス殿下………!マチルドは、マチルドはきっと殿下ならそう言って下さると信じておりました!!今ならまだ間に合いますわ!
王都に戻られましたらすぐマリエル様を婚約者候補からお外しになって下さいませ!!」

マチルド様は喜びと興奮を隠しもせず捲し立てる。

「そうだなマチルド!それが良い!!
お前は何と美しく聡明な子なんだ。ユリシス殿下、親の欲目と笑われるかもしれませんがマチルドはこの国一の美貌と謳われておりまして。性格もこの通り芯があり清らかです。若く美しい殿下の隣に立つのに何の遜色もありません。マリエル様とのご関係を清算された暁には、ぜひこのマチルドを婚約者に………。」




「……マチルド。君、サラ・レント伯爵令嬢を知っているかい?」

「…………えっっ?」

「知ってるの?知らないの?」

ユリシス様は無表情のまま問い掛ける。

サラ・レント伯爵令嬢とは、先日の夜会でお会いした栗毛のご令嬢ね。私達とお茶の席を共にしていたと言う………。でも何で今その話を?


「え、えぇ、知っておりますわ!サラ様ならお友達ですもの!ユリシス殿下、私今はとてもたくさんのお友達に恵まれてますの。王妃様のサロンを任された暁にはそれは華やかに盛り立てて見せますわ。」

しかし急に振られた話にマチルド様は少し困惑しているようだ。

「レント伯爵家のご令嬢なら昔うちにもよく遊びに来ていたな……。そうか!仰りたい事がわかりましたぞ殿下!
マチルド!もしかしてサラ嬢もマリエル様に虐げられていたうちの一人ではないのか!?」

「お父様……えぇ……実はそうなのです!
あの当時お茶会の席にはサラ様もいらっしゃって……。サラ様は私を庇ったばかりにマリエル様から酷い仕打ちを……!!」


「サラ・レントは君とはもう何年も会っていないと言っていたがそれでも友達だと?」

「えっ………」


「そして君と会わなくなった一番の原因は、君が起こしたある事件のせいだと言っていたが憶えているか?」









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