14 / 331
1章
9ー1 ユリシス
しおりを挟む「ねぇ、重いから早くどいてくれないかな。」
侍女としては無駄に大きい胸と臀部の持ち主が、ソファーで本を読む僕の側で躓いて覆い被さってきた。重いと言っているし実際本当に重くて早くどいてほしいのに、起き上がるフリをして僕の股間に胸を擦り付けてくる。
「ねぇ……君、名前は?」
頬に手を添えてやると上目遣いに微笑んで
「ワトキンス伯爵家のアンと申します。ユリシス様……わたくし、ユリシス様になら何をされても構いませんわ……」
そう言ってアンはねっとりとした視線をよこす。
「……臭い……。」
「えっ……!?」
「アラン!!ワトキンス伯爵令嬢を丁重に実家にお返ししろ!今後彼女は二度と王宮に足を踏み入れる事を許さん。」
護衛のアランが素早く彼女を回収しにきたが、アンと名乗ったその女は部屋を連れ出された後もギャーギャーと叫び続けていた。
「着替える。」
そう言うと古参の侍女は待ってましたとばかりに着替えを差し出した。できた侍女だ。もしかしたら僕が襲われた回数も記憶しているかもしれない。今度聞いてみよう。
新しく入る侍女達は皆一様に香水臭くて化粧が濃い。そういう者は雇わないようにと言っているのだが、この有り様だ。
「仕方ないですってユリシス様を見ちゃったら。美しすぎて同じ男の俺だって度肝を抜かれたくらいですから。」
僕が五歳の頃から仕えてくれる護衛のアランがケラケラと笑う。
「いくら僕が美しすぎるからと言って、まだ九歳の子供を襲ってどうするつもりだって言うんだよ。精通だってまだなのに。」
「自分で自分の事美しすぎるって言うの、本当スゲェ……。ていうかユリシス様、精通まだだったんですね……。」
香水の匂いが移った衣服を素早く脱ぎ捨て、真新しいシャツに袖を通す。
「臭い女は嫌いなんだ。香水の匂いも白粉の匂いも吐き気がする。義務じゃなければ夜会なんて絶対に出ない。」
憂鬱だ。せっかく着替えても、またすぐ臭くなる。
「まぁ今夜の夜会はデカいですからね。お気の毒ですが、俺はユリシス様の命はお守りできますけど、鼻までは無理です。諦めて下さい。」
アランの言葉に古参の侍女達も微笑んで同意していた。
13
お気に入りに追加
1,273
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。
白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5人の旦那様と365日の蜜日【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる!
そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。
ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。
対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。
※♡が付く話はHシーンです
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
皇妃は寵愛を求めるのを止めて離宮に引き篭ることにしました。
鍋
恋愛
ネルネ皇国の后妃ケイトは、陰謀渦巻く後宮で毒を盛られ生死の境を彷徨った。
そこで思い出した前世の記憶。
進んだ文明の中で自ら働き、 一人暮らししていた前世の自分。
そこには確かに自由があった。
後宮には何人もの側室が暮らし、日々皇帝の寵愛を得ようと水面下で醜い争いを繰り広げていた。
皇帝の寵愛を一身に受けるために。
ケイトはそんな日々にも心を痛めることなく、ただ皇帝陛下を信じて生きてきた。
しかし、前世の記憶を思い出したケイトには耐えられない。命を狙われる生活も、夫が他の女性と閨を共にするのを笑顔で容認する事も。
危険のあるこんな場所で子供を産むのも不安。
療養のため離宮に引き篭るが、皇帝陛下は戻ってきて欲しいようで……?
設定はゆるゆるなので、見逃してください。
※ヒロインやヒーローのキャラがイライラする方はバックでお願いします。
※溺愛目指します
※R18は保険です
※本編18話で完結
義兄様に弄ばれる私は溺愛され、その愛に堕ちる
一ノ瀬 彩音
恋愛
国王である義兄様に弄ばれる悪役令嬢の私は彼に溺れていく。
そして彼から与えられる快楽と愛情で心も身体も満たされていく……。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる