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しおりを挟む謁見の間は歓声に包まれました。
先見の力はまだ私にこの先の未来を見せてはいません。
恐らく諸国の理解を得られる展開になるからだと思います。
それでもやはり、このような申し出はありがたいものです。
我が国は一転、エリアス王子を歓迎する雰囲気に変わりました。
「エリアス王子。このコルネリウス、ローナン国王の真心を届けてくれた事に感謝する。すぐに部屋を用意させるから、どうか心ゆくまで王宮に滞在してくれ」
「こちらこそ急な訪問にも関わらず、身に余るお心遣いに感謝いたします」
エリアス王子が優雅に礼を取った後、我々は別室に移動し、しばし歓談の場が設けられました。
その間エリアス王子と従者の方々は、父や宰相閣下、そして高官の方々と、ひっきりなしに声をかけられていました。
「アンネリーエ殿下」
お開きとなり、広間を出た所で声をかけられました。
「エ、エリアス殿下!お久しぶりでございます」
「ええ、最後にお会いしたのは3年ほど前の式典でしたでしょうか」
私がお会いしたのはつい先日の事……と言ってもあれは未来のエリアス王子ですが。
再び脳裏に彼との情事の光景が浮かび、胸が急におかしな音を立てて騒ぎます。
『アンネリーエ、可愛い……可愛いよ……』
──いやぁぁぁぁぁあっ!!
耳に残るエリアス王子の甘い声。
ボッと火がついたように頬が熱くなります。
「アンネリーエ殿下、お顔が……」
「あの、いえ、何でもありません……!」
尻すぼみになる自分が情けないです。
今の私はきっと真っ赤な顔をしているに違いありません。
ですが心を乱してはいけません。思い出すのです。ハロルドと別れた朝の彼の本体を!!
──そう、私にはあの一本のみです!
それに、先見の力で見たエリアス王子との未来は、不穏な空気に満ちていました。
もし彼に何かよくない思惑があるというのなら、その片鱗でもいいので、ローナン一行の滞在期間中に掴めたら良いのですが……。
「殿下。もしよろしければ明日、お茶をご一緒しませんか?」
「お茶を……ですか?ええ、大丈夫です。では姉も誘って──」
「いえ、できればアンネリーエ殿下とふたりがよろしいのですが」
「私とふたり?」
エリアス王子はにこにこと微笑んでいます。
何か込み入った話でしょうか。
ふたりきりだとどうしても先見の光景を思い出してしまって気が散るので、できれば間に誰かいて欲しいのですが……エリアス王子の希望とあれば仕方ありません。
「わかりました。明日、侍従を迎えに行かせます」
こうして私とエリアス王子はお茶をする事になったのです。
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