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第一章
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しおりを挟む目の前に飛んでいた星がなくなると、アンリ様の笑顔が目に入ってくる。
それは良いんですけど近いっ!近すぎですアンリ様!!彼は慌てる私を何やら楽しそうに見ている。
「ア、アンリ様!近いです!」
「そうでしたか?すみません。気分はどうですか?少し楽になりましたか?」
私はそれにはいと答えながらアンリ様の膝をのそのそと降りる。心なしか淋しそうな不満そうな顔をしているのはやはり私の気のせいだろう。おそらく私を抱いていて足でも痺れたのかもしれない。
「あの……それで今日なんですが、」
「はい。ローゼンガルドの軍事力を見てみたい…と言う事で良かったですか?」
「はい!でもどうやって?」
「私のいるこの宮には王族しか知らない隠し通路がある。それを使います。」
王族しか知らない隠し通路!?
「あ、あの、アンリ様?」
「何でしょう?」
「そんな大事な事私に教えちゃって大丈夫なのですか?」
そこは私じゃなくたって誰でもつっこむだろう。今のところ私と言えば名前しか明かさないのに加えて深夜に一国の王子のベッドに落ちてくるような不審者だ。だがアンリ様はニコニコと微笑みながら言う。
「大丈夫です。それにあなただから教えるのですよ?エルフィリア。」
私だから教える?何でだ……これは罠なのだろうか。隠し通路に入ったら兵士がたくさんで、もれなく捕まっちゃうやつだろうか。
「兵士なんていませんよ。だから安心して?」
私の頭の中はすっかり見透かされていたようだ。アンリ様は面白そうに笑ってる。
…よく笑う人だな……。
私の知ってるあのアンリ様も、実はこんな風によく笑う人だったのだろうか。
「さぁ、行きましょうか。」
アンリ様はそう言うとベッドから降り、大きなタペストリーの掛けてある壁の方へと歩いて行く。
「…とっても素敵……図案も凄いわ………。」
これほど大きな物を作るには相当な時間を要した事だろう。たくさんの花が咲き乱れる中に笑う男の子………
「これは…アンリ様………?」
タペストリーの中心には青銀の髪の男の子がいる。
「よくわかりましたね…これは私の母が織った物で……。咲き乱れる花はローゼンガルドで春にしか咲かない花です。」
アンリ様はそう言うとタペストリーの裏に入り込み私を手招きする。誘われるまま裏に入るとそこには大きな鏡が。
「この国では大きな鏡は不吉だとされています。ふさいでおかなければ鏡の中へ連れ去られてしまうと言う迷信があって。だからタペストリーの裏にあるのはごく自然でしょう?でもね、ほら」
アンリ様はそう言うと鏡の端を押した。
「わぁっ!!」
鏡はクルリと回り、その先には通路が。
「さぁ、行きましょう。」
アンリ様は私に手を差し出した。
本当に大丈夫かしら……ううん、アンリ様を信じよう。
私が手を取ると、アンリ様はそれをしっかりと握り返した。
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