42 / 43
第二章
#41
しおりを挟む
宛てもなく、手掛かりもなく、拐かされたアレクトラの捜索は難航を極めるかと思いきや、そうでもなかった。
何せ拐かした連中は、かなりの大人数で行動していたため、真っ昼間という時間も相まって目立たない筈がない。
町の住人に尋ねれば、ほぼ確実に向かって行った方向を教えてくれるため、その通りに進んでいけばいいだけの話である。
やがて辿り着いたのは、町外れにあった一軒の家屋・・・・・・いや、古ぼけてはいるが、大きさだけ見れば屋敷と呼ぶのが相応しいだろう。
その屋敷の前にならず者然とした三人の男たち。
もはや、ここにいますよ、と教えているようなものだ。
真性の馬鹿で助かった、と胸中で呆れながら呟きつつエリックは猛然と三人の男たちに向かっていく。
一直線に向かってくるエリックの姿に気付いた男たちが行き先に立ち塞がる。
「おい、ここはーーー」
何かを言い掛けた一人の顔面に、走る勢いをまったく落とさぬまま拳の一撃を見舞った。
キュラほどの激烈な威力ではないが、それでも後方に吹き飛ばし、昏倒させるには充分である。
「なっ、て、てめえーーー」
残った二人が抗議か誰何の言葉を発するよりも、エリックの動きの方が速かった。
左右に大きく腕を伸ばし、掴んだ頭と頭を勢いよく搗ち合わせて黙らせる。
実に手際よく、騒ぎ立てられることなく片づけられた手腕は誇ってもいいだろうが、今はそれどころではない。
邪魔立てする者のいなくなった大きな扉を、蹴破る勢いで開け放つ。
そこで目にした光景は、あまりに醜悪で理不尽なものだった。
ざっと見た限りでは十数人はいるであろう男たちが、床に押し倒した一人に群がっている。
状況についての説明など必要ない。
今、まさに何が行われようとしているのか一瞬で見て取ったエリックは、全身の血が沸騰するような感覚を覚えた。
そこから先の記憶はない。
気付けば廃墟も同然の室内は、先程までに比べて随分な様変わりを遂げていた。
不埒者たちは全員が古びた床に伏しており、仮借なき暴力に曝されたような有様で昏倒している。
ここにきてようやく、エリックは自身の荒く乱れた呼吸と、じんじんと熱を持ち僅かな鈍痛を宿す両の拳を自覚した。
どうやら、この惨状はエリックが怒りに我を失っている間に自ら作り出したようである。
言霊も使わず、武器も使わずにあれだけの人数をたった一人で倒してしまった事実に、驚くと同時に少々感心してしまう。
そこでふと、背後で誰かが動く気配がして咄嗟に振り返れば、アレクトラが上体を起こしたところであった。
上衣は無惨に引き千切られており、布地の裂け目から素肌が覗いている。
咄嗟に目を逸らそうとしてーーー出来なかった。
何故なら、そこにあって然るべき女体が、見て取れなかったからだ。
「・・・・・・うん?」
訝しむ思いが、声として漏れ出た。
同時にエリックは、これまでのことを振り返ってみる。
どれだけ接近しても、触れたとしても起こらなかったエリックの不運。
そして今、視線の先にあるのは、どう見ても女体ではない。
そこから導き出された答えは、つまりーーー
「え? えっ、えええええええええええ!?」
驚愕のあまり発した素っ頓狂な声が、廃屋の中に響き渡った。
エリックに不運をもたらすのは女だけ。
それ以外であれば、どれだけ近付こうが触れようが何も起きるはずはない。
ただそれだけの、単純明快な事実だったというだけである。
何せ拐かした連中は、かなりの大人数で行動していたため、真っ昼間という時間も相まって目立たない筈がない。
町の住人に尋ねれば、ほぼ確実に向かって行った方向を教えてくれるため、その通りに進んでいけばいいだけの話である。
やがて辿り着いたのは、町外れにあった一軒の家屋・・・・・・いや、古ぼけてはいるが、大きさだけ見れば屋敷と呼ぶのが相応しいだろう。
その屋敷の前にならず者然とした三人の男たち。
もはや、ここにいますよ、と教えているようなものだ。
真性の馬鹿で助かった、と胸中で呆れながら呟きつつエリックは猛然と三人の男たちに向かっていく。
一直線に向かってくるエリックの姿に気付いた男たちが行き先に立ち塞がる。
「おい、ここはーーー」
何かを言い掛けた一人の顔面に、走る勢いをまったく落とさぬまま拳の一撃を見舞った。
キュラほどの激烈な威力ではないが、それでも後方に吹き飛ばし、昏倒させるには充分である。
「なっ、て、てめえーーー」
残った二人が抗議か誰何の言葉を発するよりも、エリックの動きの方が速かった。
左右に大きく腕を伸ばし、掴んだ頭と頭を勢いよく搗ち合わせて黙らせる。
実に手際よく、騒ぎ立てられることなく片づけられた手腕は誇ってもいいだろうが、今はそれどころではない。
邪魔立てする者のいなくなった大きな扉を、蹴破る勢いで開け放つ。
そこで目にした光景は、あまりに醜悪で理不尽なものだった。
ざっと見た限りでは十数人はいるであろう男たちが、床に押し倒した一人に群がっている。
状況についての説明など必要ない。
今、まさに何が行われようとしているのか一瞬で見て取ったエリックは、全身の血が沸騰するような感覚を覚えた。
そこから先の記憶はない。
気付けば廃墟も同然の室内は、先程までに比べて随分な様変わりを遂げていた。
不埒者たちは全員が古びた床に伏しており、仮借なき暴力に曝されたような有様で昏倒している。
ここにきてようやく、エリックは自身の荒く乱れた呼吸と、じんじんと熱を持ち僅かな鈍痛を宿す両の拳を自覚した。
どうやら、この惨状はエリックが怒りに我を失っている間に自ら作り出したようである。
言霊も使わず、武器も使わずにあれだけの人数をたった一人で倒してしまった事実に、驚くと同時に少々感心してしまう。
そこでふと、背後で誰かが動く気配がして咄嗟に振り返れば、アレクトラが上体を起こしたところであった。
上衣は無惨に引き千切られており、布地の裂け目から素肌が覗いている。
咄嗟に目を逸らそうとしてーーー出来なかった。
何故なら、そこにあって然るべき女体が、見て取れなかったからだ。
「・・・・・・うん?」
訝しむ思いが、声として漏れ出た。
同時にエリックは、これまでのことを振り返ってみる。
どれだけ接近しても、触れたとしても起こらなかったエリックの不運。
そして今、視線の先にあるのは、どう見ても女体ではない。
そこから導き出された答えは、つまりーーー
「え? えっ、えええええええええええ!?」
驚愕のあまり発した素っ頓狂な声が、廃屋の中に響き渡った。
エリックに不運をもたらすのは女だけ。
それ以外であれば、どれだけ近付こうが触れようが何も起きるはずはない。
ただそれだけの、単純明快な事実だったというだけである。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる