怪異の忘れ物

木全伸治

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染み

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その染みが、いつから見えるようになったのかは覚えていない。ただ、その染みがある場所で必ず人が死ぬと気が付いたのは小二くらいだったと思う。
その染みは通学路の横断歩道の真ん中に大の字でどんとあり、子供だった俺は気持ち悪くて、それを避けていつも横断歩道を渡っていた。他の子にはそれが見えないのか、友達に奇妙な目で見られることが多かった。が、ある日の下校時、その横断歩道にパトカーが止まっていて、人が集まり騒然としていた。そして、あの染みの真上に誰かが倒れていて、近くにはフロントガラスが割れた軽自動車が止まっていた。その軽の運転手らしいおばさんが警察官に取り囲まれて事情を聞かれているようだった。
その染みの上に倒れている人は救急車が到着して運ばれるまでの間、ピクリともしなかった。
きっと即死だったのだろう。そして、事故の次の日、事故現場だった横断歩道は、事故を物語る急ブレーキの跡が残り、近くに弔いの花束が添えられ、あの染みだけが奇麗に消えていることに俺は気づいた。
それから、あるマンションの前に似たような染みを見つけたときも、そのマンションで飛び降り自殺があったと聞いた翌日に観に行くと、やはり、その染みは消えていた。駅のホームから線路の上に染みを見つけたときも、後日、人身事故が起きて、電車が大幅に遅れたことを知った。
間違いなく、その染みは誰かがそこで死ぬ印だと理解した。ただ、そこで誰か死ぬと分かっても、いつ、どうやって死ぬかまでは分からなかった。とりあえず、その染みを見つけたら、気味が悪いからなるべく近づかないようにしていた。
そして、俺は就職し、結婚して子供ができた。染みは相変わらず見えたが、見えるだけで害はなかった。
そして、仕事が休みで家族サービスをして家に帰る途中で、三つの染みを見かけた。ちょうど、俺と妻と子供と同じくらいの三つの染みを道路に見つけ、ギョッとした時には、俺たち家族に、居眠りトラックが突っ込んできたところだった。

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