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宇宙観光「地球で花見」
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「なぜ、うちのような小さな会社に。宇宙規模なら、政府とかに・・・」
「いやいや、この星の政権に声をかけたら、面倒になるでしょう。下手をしたら、侵略目的で接触してきたと疑われかねません。ですから、この星の政府とは関係ない御社にツアーをお願いしたいのです」
ピシッとスーツを着た目の前の宇宙人は、完全に地球のサラリーマンに擬態していた。山手線に乗っても、宇宙人とはバレそうにないおっさんだった。
「つまり、この星の公的機関に察知されずにこっそり花見を楽しみたいお客様のツアーを用意してくれと?」
「はい、そうです。失礼ながら、この星では宇宙人が悪役として侵略してくる映画が多いようですので、なるべく誰にも宇宙人とはバレないように花見を楽しみたいのです」
「そこで、うちの桜の名所めぐりツアーに参加させて欲しいと」
観光会社の営業として、色々な営業はしてきたが、宇宙人にツアーを頼まれたのは初めてだった。
「御覧の通り、我々は、外見的に地球人に酷似した種です。地球人と同じ空気、同じ食事で大丈夫です。試しに、この私が、数ヶ月ほど、この星のホテル暮らしをさせてもらっていますが、特に体調は崩しておりません」
「ちなみにどのような方が、この地球の花見に興味を? 学者さんですか?」
「いえ、政府の高官でして、この星で言う大統領とか、王族という方々です」
「え、偉い方、ということですか」
「はい、と言いましても、公務に疲れていて、自分たちのことを知らない遠い星で疲れを癒したいという方々でして」
「でしたら、温泉とかにも」
「いえ、花の名所だけで。遠い別の星ということで、見るもの、食べるもの、すべて目新しいものばかりですから」
「なるほど。我々、地球人からしたら、海を越えて異国に旅行するようなものですよね」
「そうです。我々にとって、まだ恒星間航行の技術をもたない、この星の建造物は、魅力的な異星文明なのです」
「分かりました。この星に来られた団体様を、こちらの用意したバスで案内するということで」
「はい、この星への送り迎えは我々が、この星の観光案内は、そちらで。ちゃんと、みなさまには、宇宙人とはバレない様に行動してくださいと伝えておきますから」
そうして、小さな地方の観光会社に過ぎないうちが、宇宙からの団体客を迎えるようになった。有名な花見の場所を巡るから、当然多くの地球人ともすれ違ったが、彼らは、地球人たちに自分たちの正体がばれないように、地球人に扮装することも含めて、ツアーを楽しんでくれて、リピート客が出るくらいの人気ツアーになった。
後から知った話だが、彼らの星では、昔、惑星規模の大きな事故が起きて、地表の汚染がひどくその汚染の影響を抑えるため、地表のほとんどをコンクリートのようなもので覆ってしまったため、地球のような自然の花が激減してしまったという。だから、遠いこの地球まで、わざわざやってきているのだと。
彼らからの報酬は、金塊などの換金性の高いものを受取っていたが、最近は、
環境保全に役立つ技術などをこっそり教わっていた。恒星間を自由に行き来できる彼らの超技術を受取ることで、彼らの星のような環境破壊でコンクリートで覆われるような未来を回避できたらと思う。
「いやいや、この星の政権に声をかけたら、面倒になるでしょう。下手をしたら、侵略目的で接触してきたと疑われかねません。ですから、この星の政府とは関係ない御社にツアーをお願いしたいのです」
ピシッとスーツを着た目の前の宇宙人は、完全に地球のサラリーマンに擬態していた。山手線に乗っても、宇宙人とはバレそうにないおっさんだった。
「つまり、この星の公的機関に察知されずにこっそり花見を楽しみたいお客様のツアーを用意してくれと?」
「はい、そうです。失礼ながら、この星では宇宙人が悪役として侵略してくる映画が多いようですので、なるべく誰にも宇宙人とはバレないように花見を楽しみたいのです」
「そこで、うちの桜の名所めぐりツアーに参加させて欲しいと」
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「御覧の通り、我々は、外見的に地球人に酷似した種です。地球人と同じ空気、同じ食事で大丈夫です。試しに、この私が、数ヶ月ほど、この星のホテル暮らしをさせてもらっていますが、特に体調は崩しておりません」
「ちなみにどのような方が、この地球の花見に興味を? 学者さんですか?」
「いえ、政府の高官でして、この星で言う大統領とか、王族という方々です」
「え、偉い方、ということですか」
「はい、と言いましても、公務に疲れていて、自分たちのことを知らない遠い星で疲れを癒したいという方々でして」
「でしたら、温泉とかにも」
「いえ、花の名所だけで。遠い別の星ということで、見るもの、食べるもの、すべて目新しいものばかりですから」
「なるほど。我々、地球人からしたら、海を越えて異国に旅行するようなものですよね」
「そうです。我々にとって、まだ恒星間航行の技術をもたない、この星の建造物は、魅力的な異星文明なのです」
「分かりました。この星に来られた団体様を、こちらの用意したバスで案内するということで」
「はい、この星への送り迎えは我々が、この星の観光案内は、そちらで。ちゃんと、みなさまには、宇宙人とはバレない様に行動してくださいと伝えておきますから」
そうして、小さな地方の観光会社に過ぎないうちが、宇宙からの団体客を迎えるようになった。有名な花見の場所を巡るから、当然多くの地球人ともすれ違ったが、彼らは、地球人たちに自分たちの正体がばれないように、地球人に扮装することも含めて、ツアーを楽しんでくれて、リピート客が出るくらいの人気ツアーになった。
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環境保全に役立つ技術などをこっそり教わっていた。恒星間を自由に行き来できる彼らの超技術を受取ることで、彼らの星のような環境破壊でコンクリートで覆われるような未来を回避できたらと思う。
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