怪異の忘れ物

木全伸治

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責任能力

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私に軽度の知的障害があると分かったのは、裁判の途中で、私に責任能力があるかどうか調べた結果だった。昔から、自分がどんくさい、空気が読めないといったのは自覚していたが、まさか知的障害だったとは思わなかった。普通に生活できたし、普通に就職できた。だが、就職できても、仕事でのろまとかしっかりしろと何度も責められた。
そして、職場の同僚に殺意をもった。そんなに怒ることはない、私はそんなに悪くないと考えて、お前仕事できないから、明日、花見の場所取りしてこいと上司に言われたとき、私はそれを喜んで引き受けて、花見の料理まで用意した。
携帯をいじりながら、広げたシートの上で、仕事もせず、桜の下でゴロゴロできたのは最高だった、就業時間が過ぎて、みんながやってきて、私はみんなに花見用の手料理を振舞った。だが、それには、会社で取り扱い注意とされていた劇物を混ぜ込んでいた。
食べた全員が死んだわけではないが、何人か死人が出て、私は捕まって殺人犯として裁判を受けた。その過程で、私に軽い知的障害があると判明し、私と弁護士は、それを最大限利用して、罪を軽くしようと努力した。裁判の傍聴席で、私に殺された遺族が泣いているのが見えたが、私は、いかにも知的障碍者のように何も感じていないようにわざとらしく演技した。
そのおかげで、十人近く殺して、極刑でもおかしくなかったのに、減刑された。
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