怪異の忘れ物

【音読済】大食漢

私は、お腹がすいたら、好きなものを好きなだけ我慢せずに食う。
食べちゃいたいくらいかわいいという言葉を実践していた。
どんなにかわいいものでも、時が経てば、色あせてしまうだろう。
だが、食べてしまえば私の血肉となり、死ぬまで私と一緒だ。
だから、彼を食べたと警察に正直に話した。
彼も私と同じ、好きなものは我慢せずに食うという性格だったので、かなり太めの体格だったので、彼と一緒になった私の体重も、彼の分も増えた。
文字通り、死が二人を別つまで一緒の肉体になったので後悔はしていない。死刑という極刑となっても、死ぬまで彼と一緒と思えば怖くない。
だから、警察に、すべて隠さずに話した。
彼を食べるために料理する過程を説明するときに、刑事さんが眉をひそめたが、私は気にせず、どれだけ彼を大切に丁寧に調理したか伝えた。だから、私は精神鑑定にかけられ、責任能力がなく正常ではないと判断されて無罪になった。無罪とはいっても、刑務所に入らないだけで、鍵の付いた病室に閉じ込められ、精神異常者として、治療を受けることになった。
けれど、私は、食べちゃいたいくらいかわいいという言葉を実践しただけで、少しもおかしいとは思わなかったので、一生病院から出ることなく彼を自分の血肉にしたまま死んだ。