怪異の忘れ物

木全伸治

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初期症状 震え

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政府は、その新しい感染症の初期症状を『手足の震え』とマスコミに大々的に発表してしまった。そのため、この寒い時期、ちょっと震えただけで感染者扱いされて、『近づくな』、『ここから出ていけ』などちょっと身震いしたところを目撃されただけで、家の扉に嫌がらせの貼り紙をされるような事案が多発した。
その報告を受けて政府は慌てて、『震えとはいっても、継続的に震えるような場合で、男性が排尿時、尿を排出することで体温が下がって身震いするようなものとは全然違う。あくまでも震えが止まらないときは、初期症状を疑って通報して欲しい』と市民に冷静になるよう促したが。新しい感染症を恐れた一部の市民が、その一家は怪しいと民家に押し入り、その家族を惨殺してしまった。
その家族は、最後まで自分たちは感染していないと訴えたが、暴徒たちは聞き入れず家族を惨殺した。後日、その家の金目のものを盗んだとしてその暴動を扇動した男が捕まった。その男はその家族が震えているところは目撃しなかったが、どさくさに紛れて金目のものを盗むため人々を扇動したと自白した。ところが、取り調べ中にガタガタと震えだし、取り調べから逃れるため感染しているふりをしていると刑事たちは男を医者に見せずに拘留を続けた。その結果、その取り調べをしていた刑事たちを含め警察署内で多くの感染者と死者を出した。
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