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ポケットの中の虫
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「大人しく、ポケットの中の物を出せ」
男は拳銃の銃口を向けながら、俺に命令した。
「いいんですか、出しても」
俺はちゃんと忠告した。
「いいから出せ、そんなに死にたいのか? おもちゃだと思ってるのか?」
「はいはい、わかりました。そっちが出せと言ったんですからね」
俺はため息を吐きつつ、両ポケットに手を突っ込み何かを取り出すように手を上げた。が、開いた手のひらには何もない。
「お、おい、ふざけるな」
「ふざけてないですよ、中のものは出しました」
疑う彼にもう一度ズボンのポケットに手を突っ込み、今度はポケットを裏返しにして、本当になにもないと証明した。
「いてっ!」
男は首筋に痛みを感じ、反射的にそれを手で払った。その時になってようやく、自分の足元に気づく。黒いじゅうたんのように蠢くそれが、足元から自分の身体によじ登っていた。
「う、うわ、な、なんだこれ」
「だから、ポケットの中身ですよ。この辺りには、仲間がたくさん住んでいたようだ、俺のメスの匂いにつられて随分集まったようですね」
「お、おい、やめろ、いたひ、く、口の中に、ひ、ひぃ」
「じゃ、失礼」
俺は男の悲鳴を背中に聞きながら、ゆっくりとその場を後にした。
男は拳銃の銃口を向けながら、俺に命令した。
「いいんですか、出しても」
俺はちゃんと忠告した。
「いいから出せ、そんなに死にたいのか? おもちゃだと思ってるのか?」
「はいはい、わかりました。そっちが出せと言ったんですからね」
俺はため息を吐きつつ、両ポケットに手を突っ込み何かを取り出すように手を上げた。が、開いた手のひらには何もない。
「お、おい、ふざけるな」
「ふざけてないですよ、中のものは出しました」
疑う彼にもう一度ズボンのポケットに手を突っ込み、今度はポケットを裏返しにして、本当になにもないと証明した。
「いてっ!」
男は首筋に痛みを感じ、反射的にそれを手で払った。その時になってようやく、自分の足元に気づく。黒いじゅうたんのように蠢くそれが、足元から自分の身体によじ登っていた。
「う、うわ、な、なんだこれ」
「だから、ポケットの中身ですよ。この辺りには、仲間がたくさん住んでいたようだ、俺のメスの匂いにつられて随分集まったようですね」
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