怪異の忘れ物

木全伸治

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あの子が寂しがっているから

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義母は、夫が死ぬまで普通の人だったと思う。俗に言う嫁いびりもなかったし、結婚の挨拶で彼の実家にお邪魔したときも、すごく喜んで私を迎えてくれた。私たち夫婦と別居でも文句は言わなかったし、年末年始に彼の実家にお邪魔しても嫁である私を奴隷のように扱うこともなかった。
だが、彼が営業車を運転していて、トラックの玉突き事故に巻き込まれて死んだ葬式の夜、バタバタして私が疲れて仮眠していたとき、急に息苦しさを感じて目を開けたとき、鬼の形相をした義母が私の首を本気で締めていた。
「あの子が寂しがっているから、あんたもあっちに行きなさい」
私も最初は抵抗していたが、彼が寂しがっているという言葉に動揺して、ふと抵抗をやめてこのまま殺されてもいいかと思った。そこを義父に見つかり、義父は義母を止めて、私は助かった。義父は警察に届けてもいいと言ったが、私は警察に届けなかった。その代わり、義父は、義母にもう二度と私に近付かないようにと約束させた。
そして、私は、義母に殺されなかったが、彼のいない生活に耐え切れず、彼の一周忌の前に自殺した。
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