怪異の忘れ物

木全伸治

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相談

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どこで聞きつけたのだろうか、彼は私に相談してきた。
「あんた、霊能力があるんだろ。頼みがあるんだ」
「私のこと、誰に聞いたの?」
「中学の頃の同級生だって言ってたぜ?」
「ああ、そう」
最近は注意しているが、ガキの頃だと、つい自分の能力をひけらかす、いわゆる中二病になりやすい時期に、ついつい親しい友人に打ち明けたことがあるのを思い出す。一応、卒業後、地元でまだ交流のある同級生には、自分のことを言いふらさないように釘を刺してあるが、中学の頃親しくても、相手が地元を離れたり、疎遠になると、つい、ガキの頃の思い出として誰かに私のことを話してしまうようだ。ま、本物の霊能力を持っている知人がいたら、つい話のネタに話したくなるのも分かる。自分でも、つい自慢ではないが、言いたくなるときがある。
誰が私のことを教えたのか、いまさらどうでもいいことだ。
「で、相談があるんでしょ。どんな相談?」
「ほら、死んだ人間が化けて出るってあるだろ。あれで、死んだ彼女を呼び出せないかな?」
「は? 悪いけど、私、イタコじゃないから」
「イタコ?」
「死んだ人間を自分の身体に降ろして、死んだ人間の言葉を伝える巫女のことよ」
私は霊が見えるが、イタコはできない。
「そんな、俺、彼女とケンカしたまま別れて、そしたら、謝る前にあいつが死んじまって・・・」
「呼び出して謝りたいと?」
「そ、そうなんだ、死んだ彼女に謝りたいんだ。なんとかできないか?」
「そんなこと言われても・・・」
私が迷っていると、彼の真後ろに立っていた女性が、一刺し指を口に当て、シーというポーズをした。
「あの、その謝りたい彼女って、すごく髪が長い、美人さん?」
「あ、ああ、彼女のことを知ってるのか?」
「え、いや、なんとなく、そう思っただけ・・・」
私は、彼女が彼の後ろに憑いていることを教えなかった。
つまり、彼女は、彼の望み通り化けて出ているのだが、霊的に鈍感らしく彼は憑りつかれているのに気づいていないようだ。だが、憑りついている彼女はそれで満足のようで、私に彼に話すなと口止めを望んでいるようで私は教えなかったのだ。
そして、私にイタコの力がないことだけを伝えて別れて、数日後。彼は彼女を殺した殺人容疑で捕まった。どうやら、彼は彼女と喧嘩をして弾みで殺してしまい、遺体を空き地に遺棄して殺人を隠そうとしたが、その喧嘩したことを後悔して、彼女に謝りたくて、警察に捕まる前に私のところを訪れた様だ。
だが、彼に憑りついた彼女の表情は、殺した相手を憎んでいるようには見えなかった。幽霊となって四六時中彼のそばにいられるのを楽しんでいるようにも見えた。


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