怪異の忘れ物

B級映画

我々は、自分たち以外に、この銀河には知的生命体がいると考えて、生命が存在する可能性が高そうな惑星に無数の観測機を放った。その一つが、ある惑星で、知的生命体が放つ電波をとらえた。それはニュースやドラマなどのテレビ局が放つもので、我々は、その電波のデータを受取ると、彼らの文化を知るため、彼らの言語を翻訳してみた。すると、その過程で、彼らの娯楽映画の中で、我々に似た宇宙生命体を知性のない侵略者として扱い、彼らが武器を手に虐殺するような映像が見つかると、一部の極右的な政治家が、それを嗅ぎつけて、我々を害しようとする恐ろしい生物だとして、彼らが、宇宙に進出する力をつける前に殲滅するべきだとした。しかも、その娯楽映画では、侵略者とされた我々に似た生物が幼く弱い幼体のときを狙って彼らが武器を使って虐殺するシーンがあって、彼らを研究していた科学者から無断でその映像を拝借したその右翼政治家は、彼らの凶暴性を強調するのに利用した。
彼らの研究をしていた科学者は、その映像はあくまでも娯楽映画の映像であり、彼らが、我々を絶滅したいと思っているわけではないと涙ながら訴えた。何より、彼らは我々の観測機をUFOとして、こちらの存在をきちんと認識していないと。
だが、涙を流して訴えるのは、嘘くさいと世間ではとらえられて、その映画を作った異星人を全滅させようという世論ができあがり、彼らの星を滅ぼす、恒星間ミサイルが、無情にも発射された。