怪異の忘れ物

木全伸治

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嫌なことは嫌と言った

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ちゃんと嫌だやりたくないと言ったのだが、「お前、空気読めよ」と、まるで断る俺が悪いように言い返され、しかも、周りの目もお前がやれば丸く収まるみたいな雰囲気で、こちらの意志は完全に無視されているのを感じて、「分かったよ、やればいいんだろ」と投げやりに答えた
「でも、誰も住んでいない空き家とはいえ、不法侵入だろ? 窓ガラス壊して入れとか言うんじゃないだろうな。不法侵入に器物破損、それに誰も住んでいなくても、持ち主が防犯カメラを付けてたら?」
「大丈夫、昼間の明るいうちに見てきたら、裏口が開いてた。たぶん、近所のガキとかが出入りしてるんじゃないか」
「だからって、勝手に出入りしていいってわけじゃないだろ」
「なんだよ、ちょっと空き家の中に入って写真を撮って来るだけだろ、ゲームに負けた罰ゲームなんだから、それぐらいやれよ。しらけるだろ」
何が罰ゲームだ。勝手に罰ゲームを言い出したのはそっちだろうが。
みんなとテレビゲームをやっている最中に最下位は罰ゲームにしようぜと勝手に誰かが言い出したのであり、はじめから罰ゲームありと決まっていたわけではない。しかも、罰ゲームの内容もゲームの一位が決められるとプレイ中に勝手に決められ、ゲームで最下位になった俺に、そうして罰ゲームが押しつけられた。
月明かりの夜、その空き家の近くまでみんなで行き、俺だけ中に入る。確かに裏口のドアは鍵がかかっていなくて、簡単に開いた。スマフォのライトを頼りに土足のまま中に入る。
中は普通の家だった。古い家具がそのままで、もしかしたら、いずれリフォームして、また誰か住むのかもしれない。俺は、とりあえず、いかにも誰も住んでいないという感じのする居間をスマフォで撮った。奇妙なうめき声が聞こえたり、二階から足音がするなどの怪奇現象を警戒したが。スマフォのシャッター音が聞こえるだけで、拍子抜けするくらい何も起きなかった。
だが、俺がその空き家を出ると、外に誰も待っていなかった。
とりあえず、中に入った証拠としてラインに撮影した画像をアップしたが、
既読もなくスルーされた。
おいおい、罰ゲームとして押し付けておいて無視かよ。
だが、無視どころか、その日から、彼らの姿を見なくなった。元々遊び歩いている奴らだったので、家族もすぐには警察に捜索願を出さなかったが、さすがに一週間ほど行方不明となるとひと騒ぎとなり、どうやら俺が彼らに会った最後の人物だったらしく、警察や家族に色々聞かれたが、空き家に不法侵入したとは正直に言えず、俺は、彼らとゲームをした後、別れてから会っていない。ラインもスルーされて、あの月夜にあの後、彼らがどうなった知らないと答えた。ただ、何となく、俺は無事に何も会わなかったが、外にいた彼らが家の中にいた俺の代わりに何かと遭遇して行方不明になったんじゃないかと思った。
あのあと、明るいうちに、あの家の中に入ろうとしたが、開いていたはずの裏口が、しっかり閉まっていて、入れなくなっていた。


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