怪異の忘れ物

木全伸治

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無罪にさせられた

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俺は自首して、警察に正直にすべてを打ち明けて彼女の遺体を埋めた場所を伝えた。だが、百人以上の捜査員を動員しても彼女の遺体は見つからず、遺体が発見されないまま俺の裁判は始まった。
殺す気なんてなかったが、彼女が口喧嘩から激昂して、色々物を投げつけて来たので、つい反撃してしまい、うっかり殺してしまったのだ。だが、殺人を隠し通せるほど俺は悪人ではなかった。
俺の自供通り、警察は山の中を捜索したのだが、彼女の遺体は発見されなかった。彼女が行方不明なのは事実であり、捜査は継続され、遺体を運んだ俺の車からも彼女の血痕は発見されず、遺体と一緒に凶器も同じ場所に捨ててしまったから、殺人の証拠は俺の証言だけとなり、弁護士も俺の証言を半信半疑で、殺したという妄想にとらわれているのではないかと検察側も疑い始めて、俺を有罪にするのに弁護士も検察もどちらも消極的で、結局、証拠が乏しく、俺の妄想の可能性が強いということで、無罪判決になった。
釈放された俺は、すぐに自分で遺体を捨てたはずの山に向かった。
記憶を頼りに地面を掘り起こしてみたが、警察の捜査通り、彼女の遺体は見つからなかった。こうなると分かっていたら、遺体を埋めた場所と分かりやすい目印でもつけておけばよかったと反省した。が、周りはどこを見ても似たような景色だった。
その日から、俺は、彼女が、蘇って、俺を殺しに来るという妄想にとらわれ始めて、自殺死体として発見されるのにそう時間はかからなかった。俺の遺体はすぐ発見されたので、すぐに自殺として処理された。
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