怪異の忘れ物

木全伸治

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夏の終わりに私は死んだ

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私は死にたくなかった。
でも、友達に「私たち親友でしょ」としつこく言われ、「一緒に飛び降りようよ」と夏の終わりに誘われた。学校がもうすぐ始まると思うと死にたくなるという気持ちは理解できた。「死ぬなら、一人で死んだら」と私は内心思ったが、「一人だと怖いから、一緒に飛んでよ、ね、友達でしょ」と私の心を見透かすようにしつこく私を誘った。
屋上の鍵が開いていて勝手に入れるビルを彼女は夏休みの間ずっと探していて、ようやくここを見つけたと。彼女は自慢げにそこを私に紹介した。
なかなか高いビルで、屋上は風が少し強かった
「ここから落ちれば、一瞬だから、痛みなんて感じないから。一緒に飛び降りよ。一緒に死ねば、私たちの友情は永遠だよ。それとも、これからどんどん老けて、醜いおばさんになりたいの? 若いうちに死んだ方が絶対にいいって」と乗り気ではない私に彼女は執拗に迫った。彼女は強気な性格で、逆に私は気弱で、普段から彼女の言うことに逆らえなかった。だから、彼女はいいなりになりやすい私を友達扱いしていたのだろう。一応、化粧品とか、お菓子とか、友達っぽく彼女は私にくれたが、気弱な言いなり人形を手元に置いておきたかっただけかもしれない。だから、その時も断り切れずに、彼女と一緒に屋上の縁に並んで立った。確かに直前まで私たちは仲良く手を握っていた。だが、私の足が、一歩、宙に出た瞬間、彼女は私の手を離した。
あっと思ったときには、私は独りで地上に落ちていた。
その後、自殺で友人をなくした悲劇のヒロインぶった彼女は、私が片思いしていた先輩に同情されて、そのまま付き合い、恋人となった。
もちろん、ゆるせない。だから、あの夏の終わりから、私は怨霊として、彼女に復讐できる機会を今もうかがっていた。

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