怪異の忘れ物

木全伸治

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犯罪の告白

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戦後最悪の猟奇殺人鬼として、俺は捕まり、極刑が確定した。だが、死刑反対を唱える市民団体が、死刑は野蛮だから、控訴して、刑罰を少しでも軽くするため、戦わないかと俺に手紙を送ってきた。どうも、あいつらは、俺が、生きていれば、いずれ罪を悔い改めると夢想しているようだった。迷惑な話だ。俺自身、最悪の犯罪者で、死刑は当然と裁判でも堂々と犯行を自供して、その残酷な手口を、裁判官たちに懇切丁寧に説明した。その面倒な裁判が終わって、やっと死刑囚として、刑務所で、おとなしくしているのに、それを覆そうなどとは余計なお世話というものだ。
俺は殺人を悔いてはいない。被害者にも詫びる気持ちはない。
むしろ、戦後最悪の殺人鬼の犠牲者として、後世に名が残るのであるのだから、無為に生きて死ぬよりも有意義な死を与えたと遺族には感謝して欲しいくらいだと思う。
稀代の殺人鬼の犠牲者として、歴史に名が残るのだ。その辺りは理解して欲しいと思う。いずれ、ㇾクター博士のように映画のキャラクターとして俺をモデルにした映画ができるかもしれない。実際、俺のことを本にしたいと手紙を送ってくるフリージャーナリストも数多くいる。
つまり、俺の夢は後世に名の残る殺人鬼として、世間に認知されることであり、死刑反対を唱える連中の道具になることではない。だが、俺を死刑におびえる哀れな囚人と決めつけ、奴らはしつこく刑務所に手紙を送り、俺の夢は稀代の殺人鬼として名を残すことであり、死刑を恐れていないと懇切丁寧に説明の手紙を何度も送り返した。
そう、死刑になって当然のゲス野郎であることを証明するために、被害者をどれだけ陰惨な手段で殺したか詳細を書いて送った。俺を生かしておいても、反省しないと分からせるため、裁判以上に犯行の動機など詳細を手紙につづり続けたが、その団体の死刑反対の抗議活動の成果か、俺の死刑はなかなか実行されず、俺は獄中で病死した。
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