怪異の忘れ物

木全伸治

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3時に予告

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俺は就活に失敗して、非正規雇用であるバイトを続けていた。俺がいい会社に入れないのは政治が悪い、俺が非正規雇用なのも総理が悪いと、要するに逆恨みなのだが、なんもかんも政治が悪いとむしゃくしゃしたはらいせに、ネットで爆破予告をした。騒ぎになれば面白いという下らない動機だった。
短く、どこどこに爆弾を仕掛けたというすぐにいたずらと分かりそうな陳腐な予告メッセージだったが、ネット上の奴らは面白がってそのメッセージを拡散し、実際に、不審人物や不審物をその施設内で見かけたという書き込みまで現れて、騒動は広がっていった。正直、あまりにも拡散されるので、怖くなってきたが、もうそのメッセージは俺の手を離れて、ネットのニュースとして、取り上げられるほどになった。だが、3時を過ぎても何も起きないはずなので、3時を過ぎればいたずらと分かって沈静化するだろうと俺は思っていたが、3時、その施設で本当に爆破テロが起きた。俺のメッセージが警察にも通報されていたので、その施設は、その予告時刻に、念のため職員が退避していて死者はなく少数の負傷者が出ただけで、その負傷者も施設内を捜査していた警察関係者だけだった。結果として、俺の予告メッセージが被害を最小限に止めたわけだが、警察は、爆破予告メッセージをネットに書き込んだ俺をテロリストとして逮捕した。もちろん、俺はいたずらで爆破予告をしただけだと警察に訴えたが、爆発した場所と時間が偶然に一致するなどありえないとして、俺を容疑者と疑い続けた。マスコミも、俺をよく知る人物からの話として、そういうテロに走る危険思想の持ち主と報道した。だが、裁判を経て、俺が爆破の実行犯ではないと証明されて、いたずらの爆破予告をした偽計業務妨害罪は問われたがテロリストではないと執行猶予付きの有罪判決がでたときには、真の爆破テロリストは野放しで、俺だけが過激な爆破テロリストというイメージが定着していて、親からも勘当された。
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