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緊急避難
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「ちょっと、二人とも、喧嘩より、もう少し、建設的な議論はできないの」
唯一の女性であり、林の彼女である美佳子が俺たちの会話を止める。
「分かってるよ、で、他の宇宙船は見えたか」
彼女は窓から真空の宇宙の観察をしていたはずだった。
「全然、外は真っ暗で、なんかこの船ずっと止まってるみたい」
宇宙空間には対象物が身近にないので、惰性で航行し続けていても進んでいるようには見えない。運が良ければ、他の宇宙船とすれ違うはずだし、いずれ太陽系内の惑星の重力に捕まり、その惑星の新たな月になれるかもしれない。
「たく、航路予定表を管理局にきちんと提出してれば、今頃、俺たちが予定通りに地球に到着してないって救助隊が出てたかもしれないな・・・」
「だって、しょうがないだろ、航路予定表なんて面倒なもの提出してたら、安全な面白みのない何もない真っ暗な宙域をただ飛んで旅行が終わりだぜ」
そう、俺たちは自由気ままに宇宙を航行したくてお役所に必要な手続きをしなかったのだ。
「ね、墜落して山で遭難した飛行機の乗客が、死んだ他の乗客の死体を食って生き延びたって話って知ってる」
「なんだよ、こんなときに・・・」
「遺体を食っても生きるために必要だったと認められると緊急避難として罪にならないんだって」
「おいおい、俺たちは、まだ誰も遺体じゃないぜ」
その会話の二週間後、ようやく他の宇宙船に発見されて救助されたが、船に残っていたのは美佳子だけだった。生き残っていた彼女は、男たちは食料が切れて精神的におかしくなり、互いに殺し合い。遺体が腐ると船内の環境が悪くなると判断して船外に捨てたと証言した。
唯一の女性であり、林の彼女である美佳子が俺たちの会話を止める。
「分かってるよ、で、他の宇宙船は見えたか」
彼女は窓から真空の宇宙の観察をしていたはずだった。
「全然、外は真っ暗で、なんかこの船ずっと止まってるみたい」
宇宙空間には対象物が身近にないので、惰性で航行し続けていても進んでいるようには見えない。運が良ければ、他の宇宙船とすれ違うはずだし、いずれ太陽系内の惑星の重力に捕まり、その惑星の新たな月になれるかもしれない。
「たく、航路予定表を管理局にきちんと提出してれば、今頃、俺たちが予定通りに地球に到着してないって救助隊が出てたかもしれないな・・・」
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