怪異の忘れ物

木全伸治

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予定表

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「くそ、なんでこんなことを」
薬で眠らされていたらしいが、水の冷たさで気が付く。
体中をガムテープでグルグル巻きにされて、部屋の浴槽に俺は放り込まれていた。しかも、
ジャージャーと水が浴槽に注ぎ込まれて、徐々に水位が上がり、俺をおぼれさせようとしている。
「ごめんなさいね、こうしないと、第三次世界大戦が起こるらしいの」
「何を言って・・うぶっ、う、水が・・・」
水の中に水没しそうになるが、なんとか顔を上げて、息をする。
「外交官なんでしょ、あなた。あなた将来、出世して、外務官僚として、とある国際会議に政府高官として出席して、世界大戦を勃発させる原因となる発言をするのよ」
「あ、なにを言って・・・」
「うるさいわね、ガムテで口も塞いだ方がいいわね。苦しいかもしれないけど、あなたの死で、多くの人が救われるのよ」
「この未来から送られてきた私の予定表に、そう書いてあるの。あ、予定表と言うのは、現在の私にとってはという意味で、実際は、これから先、私が、几帳面に毎日のことを書き込んだ日記帳。つまり、過去の私から見たら、未来の予定表になるわけ。分かった?」
「・・・返事がないってことは、やっと、死んだみたいね。ごめんなさいね、あたし、荒っぽいことが苦手で、刃物も怖いし、睡眠導入剤で眠らせて、水死させるのが、一番楽かなって思ったの」
そう、この女に誘われ、のこのこ彼女の部屋に上がり込み、一服盛られて、昏睡している間にす巻きにされて、浴槽で溺れさせられたのだ。
「さて、この死体どうしよう」
浴槽の中に沈む男の死体を眺めていた彼女は、ふと自分の日記を見た。内容が書き換わり、この死体をどう処理したか、克明に書き込まれていた。
「なるほど、あいつに頼むわけか」
彼女は日記の内容通りに行動した。
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