怪異の忘れ物

木全伸治

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終末の卵

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「その卵には、人間を食らう危険なモンスターが入っている」
「人を食う化け物?」
「そう。この世界を終らせたいと願うなら、その卵を温めて孵化させればいい。そいつは、貪欲で、たった一匹でも、何千人の人間を食らう。君の住んでいるこの町の住民、例えば、会社の近くに住んでいる嫌味な上司、通勤電車の中で騒ぐ学生たち、君の身近に住んでいる目障りな人間を皆殺しにしてくれるだろう」
「俺も、こいつに食われるか?」
「ああ、君が孵化させたからと言って、君を親だと思うような知性はない。ただの人食いのバケモノが生まれる。だがら、卵のまま捨ててもいい。その場合は、何も変わらず、君の退屈な人生が無駄に続くだけだ」
俺は、その卵を孵化させずに捨てた。だが、数日後、俺とは違って、その卵を捨てずに孵化させた人は多かったらしくて、卵から孵った無数のバケモノが、人類を食いつくした。
もし、俺みたいに卵を捨てた人が多かったら、人類は滅びなかったかもしれないが、卵を羽化させた人は多く、人類はそのバケモノたちに食いつくされた。

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