怪異の忘れ物

心霊スポット

別にその地を祟っているつもりはなかった。ただ、誰にも邪魔されずに静かに死ねそうな場所として選んだだけで、心霊スポットにする気も、誰かを祟るような悪霊になりたかったわけでもない。
無遅刻無欠勤で、真面目に働き続け、特に結婚の予定もなかったので、欧米への海外赴任の辞令をもらった。海外赴任は出世コースみたいな風潮があり、同僚たちから嫉嫉らしき空気を感じ、なんとなく職場に居ずらくなって自殺を選んだ。
私がいなくなれば、他の行きたい人が海外赴任して丸く収まるだろうと漠然と考えていた。別に、同僚を恨んではいない。そういう人間関係が面倒くさくなって安易に死を選んだだけだが、自殺した私は、世の中を恨んで死んだことにされて、自殺現場に行くと祟られるというデマが流れた。
勝手に肝試しに訪れて、私に祟られずに無事に帰ると、彼らは、祟られなかったことを騙されたインチキ心霊スポットだとネットに書き込み、それを読んだ馬鹿どもが、私の自殺現場で幽霊なんか怖くないと県外からやってきたりして、夜な夜なバカ騒ぎするようになった。
だから、私はお望み通り、彼らに祟るようにした。ひとしきり騒いで、車で帰ろうとした彼らの車に同乗して、バックミラーに姿を見せたり、ちょいと車の前に飛び出して、轢かれてみたり、希望通り、祟って怖がらせてあげた。
ビビッて事故って全員死亡する交通事故が起きたが、怖い体験をしたくて心霊スポットにきたのだから自業自得だと思う。