怪異の忘れ物

木全伸治

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忘れ物したから、取りに行く

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「あんたの部屋に忘れ物したから、今から取りに行くから。」
「・・・別に、今日じゃなくてもいいだろ。」
「そういうわけにはいかないから。今欲しいから取りに行くの。」
「今欲しいって、何だよ、何を忘れたんだよ。今すぐ必要なら、俺が持って行ってやるよ。」
「本当? 持って来てくれる?」
「だから、なにを忘れたんだよ。」
「あんたの命。」
「は?」
「さっき、あんたが浮気してると思って、あの子殺しちゃったの。で、警察に捕まるの嫌だから、今から飛び降りしようと思ったんだけど、ひとりで死ぬの嫌だから、一緒に来て。」
「お前、何言って・・・」
「持って来てくれるって言ったでしょ、だから、あの世であんたが来てくれるの待ってるからね。来てくれないなら、私から忘れ物、取りに行くから。」
「お、おい、待てよ。」
「じゃ、待ってるから・・・」
「グチャ!」
「お、おい、おい、どうした、なんだ、今の音、まさか、本当に落ちたのか。」
「・・・」
「おい、よせよ、変な冗談はやめろ、気持ち悪い・・・」

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