怪異の忘れ物

木全伸治

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トレンド1位

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学校で先生と呼ばれても、大学を卒業したぐらいで、人生経験は浅く、それなのに、教員試験に合格し、どこかの学校に教師として就職できれば、誰でも先生と呼ばれる。結婚するまでの腰かけ程度、給料が安定している、休みが多そうなどの適当な動機で先生になっただけで、教員資格の合格者=聖人・人格者という保証はない。だから、生徒からいじめの相談を受けたとき、面倒臭くて、真剣に対応しなかったら、その生徒が自殺して、その親が学校に怒鳴り込んで騒いだので、仕方なく、私は別の学校に移った、幸い、教育委員会も私の指導には問題はなかったとして私が他の学校に移ることを黙認した。どうも校長が、教育委員会の上の方と知合いで、自分の責任になるのを恐れて、大事にしないよう教育委員会に働きかけた結果らしい。だから校長は、自殺した生徒の親に押しかけられても、教育委員会は問題ないと言っている、担任の先生は、もうこの学校にはいませんのでと言い逃れを続けて、うやむやにしようと努力した。私も移動した先の学校で、前の学校でいじめ問題をやらかしたということを隠して、教師を頑張っていた。
しかし、ネットで、その事件のことが話題となり、「ゆるさない〇〇先生」という言葉がトレンドの一位となり、今の学校にも、前の学校で私がやらかしたことがばれ、今の学校にいられなくなり、また別の学校に移ることにした。教師を辞めようかとも思ったが、それでは、自分が悪かったと認めるようで、それは出来なかった。幸い、その県の教育委員会は保守的で、問題のある教師だからと言って、即切り捨てにするようなことはしなかった。保守的というより、正確には問題に真摯に向き合って責任を取らされるのが嫌というのが本音のようだった。私だってそうだ。いじめ問題は教師の責任と言われても、子供はそれなりにずる賢く、いじめの証拠をそう簡単には大人には見せない。
それなのに、教師が悪いと言われる。悪いのはいじめをしていた生徒だし、教師が生徒の行動すべてを把握するのは不可能だ。だから、色々悩んだ挙句、思い切って教師を辞めて、彼と結婚することにした。もちろん、彼のご両親には、私が担任だった生徒がいじめを苦に自殺したことは隠した。教師を寿退職して逃げることにしたのだが、彼との結婚式が近づくと、生徒を自殺させておいてゆるさないと、また私のことがトレンド1位となり、彼の両親の目にも留まり、私の結婚は破談になった。私はそのトレンド一位にさせた拡散元を調べたが、見つからず、結局、教師を辞めて結婚をあきらめて、パートで細々と生きることになった。
教師を辞めて結婚を断念してからはトレンド一位になることはなかった。
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