159 / 387
あんたが死ねば良かったのに
しおりを挟む
兄の葬儀のとき、母が、「あんたが死ねば良かったのに」とポツリとこぼしたのを俺は聞き逃さなかった。だから、兄の葬儀の後、なにかと兄と比較されてバカにされてきた俺は、母親と完全に絶縁状態になった。以前から、兄にべったりで、実家を出た俺もあまり母とは連絡しなかったので、絶縁状態になるのは難しくなかった。割と有名な企業に就職して結婚して孫もできたが、未だ母親に孫を会わせてはいない。
「あんたが死ねば良かったのに」と言われただけでなく、あの葬儀場で、俺は死んだ兄貴が幽霊として、泣きわめく母をうんざりしたような目で見ていたのを知っていた。兄の死因も警察から自殺かもしれないと母は聞いていたのに、自分が過剰に頭の良い兄の将来に期待して兄を精神的に追い詰めていたということに思い至ってはいないようだった。そんな母親だから、俺は孫を会わせられなかった。死んだ兄に代わって、孫に過剰に期待されたら困るからだ。死んだ兄も同じ思いのようで、守護霊とやらになって、実家ではなく今はうちにいた。子供も兄に守られているのが分かるのか、時々、何もない壁に笑いかける。俺の兄が見えない妻は、それが気持ち悪いようだが、俺がちゃんと説明すると納得したのか、それからは、時々、「お兄さんありがとうございます」と呟くようになった。兄を亡くした母は、すっかりボケたようだが、知ったことではない。
「あんたが死ねば良かったのに」と言われただけでなく、あの葬儀場で、俺は死んだ兄貴が幽霊として、泣きわめく母をうんざりしたような目で見ていたのを知っていた。兄の死因も警察から自殺かもしれないと母は聞いていたのに、自分が過剰に頭の良い兄の将来に期待して兄を精神的に追い詰めていたということに思い至ってはいないようだった。そんな母親だから、俺は孫を会わせられなかった。死んだ兄に代わって、孫に過剰に期待されたら困るからだ。死んだ兄も同じ思いのようで、守護霊とやらになって、実家ではなく今はうちにいた。子供も兄に守られているのが分かるのか、時々、何もない壁に笑いかける。俺の兄が見えない妻は、それが気持ち悪いようだが、俺がちゃんと説明すると納得したのか、それからは、時々、「お兄さんありがとうございます」と呟くようになった。兄を亡くした母は、すっかりボケたようだが、知ったことではない。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる