怪異の忘れ物

こっちに来なさい、妹でしょ

「こっちに来なさい、妹でしょ」
「なんで、私がお姉ちゃんのところに行かないといけないの」
「妹が姉の言うことに従うのは当然でしょ。黙って言う通りになさい」
「嫌だ。だいたい、お姉ちゃんが死んだのだって、不倫して、その間男の車に乗って浮気中のドライブで事故ったのが原因でしょ、自業自得じゃない」
「うるさいわね。だから、旦那じゃなくて、あんたにこっちに来なさって言ってるんじゃない」
「間男も、そっちにいるんでしょ、あの世で、お二人で仲良くしてれば」
「バカ言わないで。あいつの下手くそな運転のせいで死んだんだから、仲良くやれるわけないでしょ」
「ああ、死んだのを浮気相手のせいにして、あの世で逃げられて一人になったから、いますぐ私に来いと。相変わらずお姉ちゃんらしいわね」
「いいから、早く、こっちに来なさい」
「いやだって、第一、今、お姉ちゃんの旦那さんを慰めるので忙しいから」
「慰める？」
「だって、自分の妻が浮気相手と事故死したのよ、旦那さんがショックを受けるのは、当然でしょ。そう言うところに気が回らないのがさすが、お姉ちゃんね」
「なに、あんた、私が死んだのをいいことに、私の旦那を寝取るつもり？」
「寝取る？　死別なんだから、寝取りじゃないでしょ」
「そんなことして、ただで済むと思ってるの？」
「祟るって、言うの？　でも、本当は生者に手出しできないから。私に自分で死ねって命令してるんでしょ、自分で直接祟り殺せるなら、命令して自害させる必要はないわよね、お姉ちゃん」
「あ、あんた・・・」
「ほらほら、祟り殺してみなさいよ。もうお姉ちゃんなんか怖くないから」
「くっ・・・」