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今日から私はあなたです。
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「今日から私はあなたです。お疲れさまでした」
「は?」
帰りの電車で仕事帰りで疲れて最寄り駅までウトウトしていた私の肩を揺さぶって、その男はそう言って電車を降りて行った。
俺は、何のことかわからず、だが、そこが自分の降りるべき駅だと気づいて、閉じようとしていたドアをすり抜けて慌てて俺も降車した。寝過ごす俺を起こしてくれた親切な男の姿はない。こちらを知っているようで、一言ぐらいお礼を言いたかったが、礼を言うべきような起こし方ではなかった気もするので、とりあえず、そのまま改札を抜けて家へと帰る。が、家の玄関に立つと、中から楽しそうな笑い声が聞こえた。まだ俺の帰りを待つ妻一人だけのはずと、怪訝に思いながらドアを開けようとしたが、なぜか、鍵が合わなかった。おかしいと思いつつ仕方なくチャイムを鳴らす。すると、「はぁ~い、どなたですか」と妻の返事があり、すぐにドアを開けてくれた。が、ドアを開けた妻は俺の顔を見るなり、「ん? どなたですか?」と素っ頓狂なことを言った。「誰って、おい・・・・」
俺は怒りそうになったが、その妻の後ろから男が出てきた。が、何となく見覚えがあった。あの電車で俺を起こしてくれた男だ。
「こんな時間にセールスですか、家族と食事中なんで迷惑なんで帰ってくれませんか」
男は、さも、この家の大黒柱然とした態度で言い放った。いや、この家の主は俺だと、反論するよりも早く、妻が、「済みませんが、夕食の最中なので、失礼します」と問答無用という感じでドアをバタンと占めた。もちろん納得できるはずもなく、俺は何度もチャイムを鳴らしたが、あまり騒ぐのなら警察を呼びますよと言われて、これ以上はご近所の迷惑になるかと、俺は自宅を去った。仕方なく、駅の近くの漫画喫茶に一泊することにした。
翌朝、再びに自宅に凸したのだが、対応した妻は、やっぱり、俺を赤の他人のように扱った。で、財布の中の銀行のキャッシュカード、クレジットカード、果ては、スマフォまで使えなくなっていることに気がつくのにさして時間はかからなかった。昨日のスーツのまま会社に出社しても、上司に同僚も妻と同じような反応で、財布に残っていた現金で仕方く、両親のいる実家に戻っても、実の親でさえ妻や会社と同じように俺のことを全く知らない赤の他人扱いだった。
着ていたスーツや腕時計を売ってしばらく凌いだりしたが、浮浪者に混じって炊き出しにすがるようになるまで、そう時間はかからなかった。
俺の仕事や妻を奪った男の正体は分からない。ただ、絶望して自殺したら、それこそ、完全敗北だと思い空き缶を拾い小銭を稼いで生き延び続けていた。ある時、仕事で嫌なことがあったのか公園のベンチで酔っ払ってだらしくなく座っている男を見つけた。空き缶を拾っているときに何度か見かけたことのある家の御主人だ。俺はふと、その男の肩を叩き「今日から私はあなたです。お疲れさまでした」と声をかけてしまっていた。
「は?」
帰りの電車で仕事帰りで疲れて最寄り駅までウトウトしていた私の肩を揺さぶって、その男はそう言って電車を降りて行った。
俺は、何のことかわからず、だが、そこが自分の降りるべき駅だと気づいて、閉じようとしていたドアをすり抜けて慌てて俺も降車した。寝過ごす俺を起こしてくれた親切な男の姿はない。こちらを知っているようで、一言ぐらいお礼を言いたかったが、礼を言うべきような起こし方ではなかった気もするので、とりあえず、そのまま改札を抜けて家へと帰る。が、家の玄関に立つと、中から楽しそうな笑い声が聞こえた。まだ俺の帰りを待つ妻一人だけのはずと、怪訝に思いながらドアを開けようとしたが、なぜか、鍵が合わなかった。おかしいと思いつつ仕方なくチャイムを鳴らす。すると、「はぁ~い、どなたですか」と妻の返事があり、すぐにドアを開けてくれた。が、ドアを開けた妻は俺の顔を見るなり、「ん? どなたですか?」と素っ頓狂なことを言った。「誰って、おい・・・・」
俺は怒りそうになったが、その妻の後ろから男が出てきた。が、何となく見覚えがあった。あの電車で俺を起こしてくれた男だ。
「こんな時間にセールスですか、家族と食事中なんで迷惑なんで帰ってくれませんか」
男は、さも、この家の大黒柱然とした態度で言い放った。いや、この家の主は俺だと、反論するよりも早く、妻が、「済みませんが、夕食の最中なので、失礼します」と問答無用という感じでドアをバタンと占めた。もちろん納得できるはずもなく、俺は何度もチャイムを鳴らしたが、あまり騒ぐのなら警察を呼びますよと言われて、これ以上はご近所の迷惑になるかと、俺は自宅を去った。仕方なく、駅の近くの漫画喫茶に一泊することにした。
翌朝、再びに自宅に凸したのだが、対応した妻は、やっぱり、俺を赤の他人のように扱った。で、財布の中の銀行のキャッシュカード、クレジットカード、果ては、スマフォまで使えなくなっていることに気がつくのにさして時間はかからなかった。昨日のスーツのまま会社に出社しても、上司に同僚も妻と同じような反応で、財布に残っていた現金で仕方く、両親のいる実家に戻っても、実の親でさえ妻や会社と同じように俺のことを全く知らない赤の他人扱いだった。
着ていたスーツや腕時計を売ってしばらく凌いだりしたが、浮浪者に混じって炊き出しにすがるようになるまで、そう時間はかからなかった。
俺の仕事や妻を奪った男の正体は分からない。ただ、絶望して自殺したら、それこそ、完全敗北だと思い空き缶を拾い小銭を稼いで生き延び続けていた。ある時、仕事で嫌なことがあったのか公園のベンチで酔っ払ってだらしくなく座っている男を見つけた。空き缶を拾っているときに何度か見かけたことのある家の御主人だ。俺はふと、その男の肩を叩き「今日から私はあなたです。お疲れさまでした」と声をかけてしまっていた。
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