怪異の忘れ物

木全伸治

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初めての人肉

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空腹だった。なにを食っても味がしなかった。腹にたくさん詰めても、満腹を得られずに吐いた。しかも、胃液の混じったゲロの状態ではなく、食べたものをそのまま戻していた。どうやら、完全に胃は活動をやめているようだ。味がしないのも舌の神経組織が死んでいるせいだろう。なのに空腹感だけはある。なにか食わないと我慢できないと、肉体が食べ物を欲していた。
だから、色々食べてみるが、味がまったくしないのと、どれだけ胃に送り込んでも満腹感はなく、俺はどうしたらいいのか、困惑していた。
「あら、また戻したの?」
床にぶちまけた俺の吐しゃ物を見て、妻はタオルを持って来て、奇麗に片付けた。そして、持って来た食べ物を差し出す。
「今日は、桃が手に入ったの。これなら食べられるんじゃないかしら」
奇麗に皮をむいて食べやすいように切って皿に盛ったそれを俺の前に差し出す。
美味そうと思った。そう思ったのは桃ではなく、皿を持つ妻の指先だった。
後は、夢中でかぶりつき、生のまま妻を骨までしゃぶっていた。
妻の悲鳴は聞こえていたが、それ以上に、人肉への欲求が勝っていた。



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