怪異の忘れ物

木全伸治

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おめでとう、いいお年を

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初詣客のため地下鉄の終電時間が延長されて、俺は、それを利用して、帰るところだった。俺と同じような初詣らしき客が多かったが、通勤ラッシュのような混雑はなく、どちらかというとガラガラだったので、俺は神社の参拝で並んで疲れたので空いていた優先席に何気なく座った。
少し眠かったので、軽く目を閉じていた。そして、乗り過ごさないように、そろそろ降りる駅かと車内アナウンスを聞きながら、目を開けた。すると、ガラガラなのに、俺の周りに乗客が集まっていて、俺が目を開けると同時に、「おめでとう、いいお年を」と言って、ばらばらと散っていった。
何だ、いまの?と俺はいぶかったが、降りる駅に到着したので、優先席を立った。
「よっ!」
疲れていたせいか、つい口から、声が漏れた。身体が妙にだるいので、
自動改札を出ると俺はすぐ、トイレに向かった。
洋式トイレの個室に腰かけて落ち着こうと思ったのだ。そして、トイレの鏡で、俺は自分が、いい年のお爺さんになっていることにようやく気付いた。
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