怪異の忘れ物

心霊画像

「ね、こんなの見付けたんだけど」
そう言って私は、彼にネットで拾った画像を見せた。それは男女のカップルが温泉旅館らしき室内で二人で自撮りした画像で、男女の顔はぼかし加工されていたが、ぼかしで隠されていない、男の肩辺りに、楽しそうにしている男女を睨むような女の顔が映り込んでいた。いかにも、その部屋で自殺でもして、楽しそうにしている男女を恨めしそうに見ている心霊写真だった。
「うわ、何だこれ、CGか何かの加工じゃないのか」
「そのお化けの方はいいのよ、これ、あんたでしょ、一緒に写っている女は、誰？」
「は？　なに言ってるんだよ、お前」
「だから、こんなぼかしで誤魔化せると思ってるの？　ここに映ってるのはあんたでしょ、誰よこの女。どう見ても私じゃないわよね。誰なのよ！」
前々から、彼が浮気しているんじゃないかという疑いはあったが、ようやく決定的な証拠を見つけたのだ。ぼかしを入れれば大丈夫と、相手の女が面白半分にネットに上げたのだろう。
その画像に映っている幽霊らしきお化けが、自分に似ていると気づいてのは、彼ときっぱりと別れた後だった。きっと彼の浮気を疑い始めて悶々とした気持ちが生霊としてあそこに映り込んでしまったのだろう。