怪異の忘れ物

木全伸治

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私は逃げ延びた

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私は、覆面の通り魔に襲われ夜の街を逃げ回り、なんとか逃げ延びた。もちろん逃走中に警察に通報したのだが、駆けつけた警察官は、その通り魔の餌食となって殺された。しかも、奴は犯行発覚を遅らせるため、警察官の遺体を隠した。助けを呼んだら、余計な人まで殺されると判断した私は、もう、助けを呼べなくなり、ただ一人で明るくなるまで逃げ回った。明るくなれば、さすがに通り魔も諦めるだろうと思い、明るくなった頃合いで近くの交番に逃げんだ。そこには、幸い警察官がふたりいた。交番の警官は巡回中で不在の場合があるので、私は助かったと単純に安堵したが、ひとりの警官が私から調書を取っているとき、もう一人の警官が、通り魔と同じ凶器を取り出して、その調書作成に集中していた相棒を襲った。驚いた私は、とにかく、また逃げ始めた。助けを呼んでもダメだし、逃げ込んだ先の交番に通り魔が潜んでいた。どうしていいか分からず、とにかく、逃げ延びることだけを考えた。すると、通り魔の警官は、すべて私の犯行だと上司に報告した。特に私が犯人だという物証もなかったが、私が犯人ではないという証拠もなかったので、その警官の偽証が認められ、せっかく命がけで生き延びた私を待っていたのは、指名手配されて、その冤罪で逃げ回る日々だった。
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