怪異の忘れ物

おやすみお化けが連れてった

それは、夜更かしして、なかなか寝ない子供を戒めるための寓話だった。単純に、夜更かしするような悪い子は、夜、おやすみお化けという怖いお化けに連れていかれるという大人なら、誰も信じない話だった。
だが、ある夜、子供たちが寝た後、その子供を残して、夜更かししていた親たちが行方不明になるという事件が多発した。
育てるのが面倒になり子供を残して、親が蒸発というのは、現実に起こりうることだった。しかし、大抵は、親のどちらかが浮気して、その浮気相手と幸せになるんだと、片方の親が家を出て、もう片方は子どものそばに残るものであり、両親とも消えてしまうのは異常だった。両親が揃って子供への愛情をなくすなくして失踪なんて、普通ならありえない。そして、残された子供たちの中に、夜、物音を聞いて、覗いてみたら、夜更かししていた両親をおやすみお化けが連れて行ったと証言する子供がたくさんいた。
もちろん、大人たちは信じなかったし、大人に信じてもらえなかった子供たちは、仕方なく、押し黙った。だが、それを経験して大人になった子供たちは、自分の子供たちに真剣におやすみお化けの怖さを伝え、おやすみお化けを信じない大人も減った。