怪異の忘れ物

熱帯夜

それは地球環境を考えているとアピールする政治家のパフォーマンスだった。与党も彼の国民的知名度をあてにして内閣の重要ポストに就けた。彼の学歴を見れば、科学に詳しくない文系だと分かるのだが、彼は環境のためという理由で、どんどん原発を廃止し、クリーンだからと太陽光パネルを日本中に設置した。だが、太陽光発電で得られる電力は、安定して得られるものではなく、しかも、多くの森や林を強引に更地にして太陽光パネルを並べたため、結果的に自然が減り、台風で吹き飛ばされた太陽光パネルが人や民家に直撃して、命を奪うということが多発したその夏、猛暑が続き、しかも、林を削って更地にしたことから、昼間温められた地面がなかなか冷めず連日熱帯夜となった。当然、電力消費量も跳ね上がり、ついに、限界を超えて町の明かりが一斉に消えた。信号機も街灯も家の明かりも消えた暗闇の中で、交差点では事故が多発し、エアコンが切れた室内にいた高齢者が大勢、緊急搬送される事態となった。
原発削減を主導した彼は、とにかくテレビに出て、自分の政策は間違っていないアピールを繰り返し、その夏の電力不足は一向に改善されなかった。