ヒーローだって人間です

木全伸治

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独裁者の生まれる過程

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「我々はヒーローに騙されていた」という動画がうpされた。それは、いつも必ずヒーローが勝つのはおかしいというもので、まわりの建物や野次馬の被害を気にしてヒーローが攻撃をためらった場面などを切り抜いた動画を編集して、いかにもヒーローの行動がおかしいように作られた動画だった。もちろん、それが悪意のある編集動画だと言うまともな批判もあったが、自国を批判するのが当たり前の左派メディアは、国旗をモチーフにしたスーツを着る彼をネトウヨだと。正義の名のもとに弱者をいたぶる差別主義者だとして叩き始めた。
マスコミに叩かれて、辟易した彼はヒーロー活動を自粛することにした。
結果、犯罪の発生率は上がり、被害者は、ヒーローを叩くような動画を製作した人物を攻撃した。だが、ネットで叩かれれば叩かれるほど、そいつの動画再生数が増加し、本気で、ヒーローが、悪人と裏で手を組んでいて、悪だくみを考えていると信じるバカが増えて、そんな世の中にヒーローは失望していった。
だが、犯罪が増加すると、ヒーローを叩いたマスコミに対して人々は不信感を募らせ、新聞の不買運動やテレビの視聴率も当然のように下落すると、マスコミは手の平を返して、その動画の批判とヒーローを絶賛し始めたのだが、その頃には、マスコミの言動に失望して闇落ちしたヒーローが、その力を使って世界の支配者になっていた。
ヒーローが統治する世界だから、当然、犯罪の発生も少なく、マスコミも彼を独裁者と糾弾できなくなっていた。


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