ヒーローだって人間です

木全伸治

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戦闘員たちの勝利

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「な、正直、うちらの将軍って、はっきり言って無能ばっかりじゃね」
「おいおい、ぶっちゃけるね」
仲間の戦闘員の言葉に俺は苦笑を返すのが精一杯だった。確かに俺たちの上司は毎回口先だけは威勢がいいが、実際のところヒーロー連中に連敗ばかりで実績も何もないのに威張られるのにはうんざりしていたのは俺も同じだった。
「だが、下手なことは言わない方がいい。粛清されるぞ」
ここは悪の組織であり、当然のごとく規律は厳しい。
「聞かれたら、そのまま不満をぶちまけてやるだけだ」
「強気だな」
「だってよ、毎回、前座でやられるだけだぜ、俺たち。雑魚兵力だからって、もう少し頭を使ってほしいよな」
「例えば、複数拠点を同時襲撃して、敵戦隊をひとりひとり分断して、各個撃破とか?」
「そうそう、それ。将軍らの本隊は一か所に戦力集中して、残りは俺たち雑魚戦闘員が各個攻撃しヒーローたちの分断を誘う。所詮相手は五人程度。分断し、ひとりひとり各個撃破していけば、絶対に勝てない相手ではないはず」
「うん、だよな」
「いっそ、総統を暗殺して俺たちが入れ替わり、将軍たちを操った方が良くね」
悪の組織の戦闘員をやっているだけあって、俺たちに善人の素養はなく、総統や将軍たちに対する絶対的な忠誠心もなかった。
そして、俺たちは将軍たちにばれないよう総統を暗殺し、その仮面を奪い、素顔を隠して悪の組織の運営を始めて、本当に卑怯卑劣な手段でヒーローたちを追い詰め始めた。これまでの怪人一体に付き小数の戦闘員ではなく、怪人を二体以上、当然戦闘員の増加及び装備強化を行い、これまでの散発的な攻撃ではなく、複数同時攻撃によるヒーローの戦力分散を行い、追い詰めていった。それに呼応するようにヒーローたちも、仲間を増やそうとしたが、悪の組織もこれまで複数存在しており、幹部が死んで、下っ端戦闘員だけが残っていた弱小組織を結集してヒーローと戦い、これまで週一程度のぶつかり合いで済ませてていたものをヒーローの消耗を狙うように連続して攻撃を仕掛け、これまでのやり方を改めた俺たちはヒーローを攻め立てていき、ついに勝利した。
そして、世界を支配したが、我々以外が悪をなすことを許さず、我々が厳しく支配することで、ヒーローがいた頃より、世界の治安は良くなっていた。


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